法廷等の秩序維持に関する法律第二条にもとづき当該被告事件の弁護人を非公開の法廷で監置処分にしても、憲法第三一条、第三四条、第三七条第三項および第八二条に違反するものではない。
法廷等の秩序維持に関する法律第二条にもとづく監置決定の合憲性。
法廷等の秩序維持に関する法律2条,憲法31条,憲法34条,憲法37条,憲法82条
判旨
法廷等の秩序維持に関する法律による制裁は、司法の使命と正常な運営を確保するために司法に内在する特殊な処罰であり、憲法が要求する刑事裁判上の諸手続の適用は排除される。
問題の所在(論点)
本法に基づく監置決定およびその保全処置としての身柄拘束につき、令状の発付、勾留理由の開示、訴追、弁護人依頼権、裁判の公開といった刑事手続上の憲法上の保障が及ぶか。
規範
法廷等の秩序維持に関する法律(以下「本法」)に基づく制裁(監置等)は、司法の自己保存および正当防衛のために司法に内在する権限に基づくものであり、従来の刑事的・行政的処罰のいずれにも属しない特殊な処罰である。したがって、裁判所等の面前における現行犯的行為に対し適用される場合には、憲法が刑事裁判に関して要求する諸手続(令状発付、勾留理由開示、訴追、弁護人依頼権等)の適用は排除される。また、当該手続は必ずしも公開の法廷で行う必要はない。
重要事実
特別抗告人は、法廷内において本法2条所定の秩序を乱す言動(具体的な言動内容は判決文からは不明)を行い、第一審裁判所により監置処分に処された。特別抗告人は、本法による制裁や拘束が、令状主義や弁護人依頼権等の刑事手続上の憲法規定に違反し、かつ公開法廷で行われない点も違憲であると主張して特別抗告を申し立てた。
事件番号: 昭和35(秩ち)1 / 裁判年月日: 昭和35年9月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】法廷等の秩序維持に関する法律2条1項の制裁規定は、憲法に違反するものではない。法廷の秩序を維持するための裁判所の措置は、司法権の適正な行使を保障する観点から合憲と解される。 第1 事案の概要:本件は、法2条1項に基づき制裁を受けた者が、当該規定が憲法に違反すると主張して特別抗告を申し立てた事案であ…
あてはめ
本法による権限は、司法の正常な運営を確保するために司法に内在する性質を有する。対象者が被告人、弁護人、傍聴人のいずれであるかを問わず、裁判官の面前等で秩序を乱す現行犯的行為があった場合には、即座に司法権自体の作用として制裁を科すことが認められる。この性質に鑑みれば、通常の犯罪に対する刑事訴追とは次元を異にするため、憲法が定める刑事手続上の諸保障を厳格に適用する必要はなく、公開法廷での審理も必須ではないと解される。
結論
本法に基づく制裁手続において、刑事裁判に関する憲法の諸手続の適用を排除し、非公開で行うことは憲法に違反しない。本件特別抗告を棄却する。
実務上の射程
裁判所法に基づく法廷警察権の行使や、本法による監置処分の憲法適合性を論じる際のリーディングケースである。刑事手続の保障(憲法31条以下)が及ばない「司法の自己保存的権限」という特殊な枠組みを肯定する点に特徴があり、法廷の秩序維持という目的の特殊性から手続的保障が限定される場面での論拠として活用できる。
事件番号: 昭和28(秩ち)1 / 裁判年月日: 昭和33年10月15日 / 結論: 棄却
一 法廷等の秩序維持に関する法律による制裁は従来の刑事的行政的処罰のいずれの範疇にも属しないところの、本法によつて設定された特殊の処罰である。そして本法は、裁判所または裁判官の面前その他直接に知ることができる場所における言動つまり現行犯的行為に対し裁判所または裁判官自体によつて適用されるものである。従つてこの場合は令状…
事件番号: 昭和35(秩ち)2 / 裁判年月日: 昭和35年10月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】法廷等の秩序維持に関する法律は、司法の使命とする正常かつ適正な運営を確保するために必要不可欠な権限を定めたものであり、憲法19条、21条、31条等の諸規定に違反しない。 第1 事案の概要:特別抗告人が、法廷等の秩序維持に関する法律(本法)の規定が憲法19条(思想・良心の自由)、21条(表現の自由)…
事件番号: 昭和60(秩ち)1 / 裁判年月日: 昭和60年11月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】法廷等の秩序維持に関する法律に基づく制裁手続は、通常の刑事裁判の手続とは異なる簡易なものであるが、憲法31条等の刑事手続上の保障が及ばないわけではなく、その趣旨に反しない限度で適憲とされる。本法による監置決定は、裁判官の面前等で行われた秩序を乱す言動に対し、法廷の尊厳と審判の適正を確保するために行…
事件番号: 昭和55(秩ち)2 / 裁判年月日: 昭和55年7月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】法廷等の秩序維持に関する法律に基づく制裁手続が、憲法31条、32条、34条に違反しないことは、当裁判所の大法廷判例の趣旨に照らし明らかである。 第1 事案の概要:抗告人は、法廷等の秩序維持に関する法律に基づく制裁を受けたが、同法による制裁の手続およびその解釈が、憲法31条、32条、34条に違反する…