一 法廷等の秩序維持に関する法律による制裁は従来の刑事的行政的処罰のいずれの範疇にも属しないところの、本法によつて設定された特殊の処罰である。そして本法は、裁判所または裁判官の面前その他直接に知ることができる場所における言動つまり現行犯的行為に対し裁判所または裁判官自体によつて適用されるものである。従つてこの場合は令状の発付、勾留理由の開示、訴追、弁護人依頼権等刑事裁判に関し憲法の要求する諸手続の範囲外にあるのみならず、またつねに証拠調を要求されていることもないのである。 二 法廷等の秩序維持に関する法律第二条にもとずく監置決定および同法第三条第二項による行為者の拘束は、憲法第三二条、第三三条、第三四条ならびに第三七条に違反するものではない。
一 法廷等の秩序維持に関する法律による制裁の特殊性。 二 法廷等の秩序維持に関する法律第二条にもとずく監置決定および同法第三条第二項による行為者の拘束の合憲性。
法廷等の秩序維持に関する法律1条,法廷等の秩序維持に関する法律2条,法廷等の秩序維持に関する法律3条,法廷等の秩序維持に関する法律4条,法廷等の秩序維持に関する法律3条2項,憲法32条,憲法33条,憲法34条,憲法37条
判旨
法廷等の秩序維持に関する法律に基づく監置等は、司法の自己保存・正当防衛のために司法に内在する権限に基づく特殊な処罰であり、刑事裁判に関し憲法が要求する諸手続の範囲外にある。事案が簡単明瞭な現行犯的行為に対して迅速に裁判の威信を回復する目的から、令状の発付や弁護人依頼権等の手続を経ないことは合憲である。
問題の所在(論点)
法廷等の秩序維持に関する法律に基づく監置・拘束手続が、憲法33条(令状主義)、34条(抑留・拘禁の理由開示等)、37条(刑事被告人の諸権利)等の適正手続の保障に違反しないか。
規範
法廷秩序維持の権限は、司法の使命と正常な運営を確保するために司法に内在する権限であり、公共の福祉の要請に基づく。本法による制裁は、刑事的・行政的処罰のいずれにも属さない特殊な処罰であり、裁判官の面前における現行犯的行為に対して適用される。事案が簡単明瞭であり、人権侵害の恐れがなく、かつ裁判の威信を迅速に回復する必要がある場合、刑事裁判に関し憲法が要求する諸手続(令状、理由開示、弁護人依頼権、証拠調等)を欠いても、憲法32条、33条、34条、37条に違反しない。
事件番号: 昭和35(秩ち)3 / 裁判年月日: 昭和35年9月21日 / 結論: 棄却
法廷等の秩序維持に関する法律第二条にもとづき当該被告事件の弁護人を非公開の法廷で監置処分にしても、憲法第三一条、第三四条、第三七条第三項および第八二条に違反するものではない。
重要事実
抗告人は、裁判所により「法廷等の秩序維持に関する法律」2条に基づく監置決定、および同法3条2項に基づく監置のための保全処置としての拘束を受けた。抗告人は、これらの処分が令状なしの身体拘束や弁護人依頼権の欠如を伴うものであり、憲法32条、33条、34条、37条が保障する適正な刑事手続を無視した違憲なものであると主張し、特別抗告を申し立てた。
あてはめ
本件処分は、裁判所の面前で行われた現行犯的行為に対する制裁である。この場合、事実関係は裁判官が直接知ることができ簡単明瞭であるため、誤認による人権侵害の恐れは乏しい。また、損なわれた裁判の威信を実効的に回復するためには迅速な処置が不可欠である。したがって、通常の刑事手続が求める厳格な手続要件(令状発付や証拠調べ等)を要求しなくても、手続の合理性と迅速性の観点から正当化されるといえる。
結論
本法に基づく監置および拘束は、刑事裁判に関する憲法の諸手続の範囲外にあり、憲法32条、33条、34条、37条に違反しないため合憲である。
実務上の射程
司法権に内在する「自己保存的権限」を認めた重要判例。刑事罰とは異なる「特殊な処罰」のカテゴリーを認め、現行犯的状況下での迅速性・明白性が認められる場合には、憲法上の刑事手続保障が一部及ばない(あるいは修正される)とする理論構成として、他の法廷秩序維持事案の検討にも活用できる。
事件番号: 昭和60(秩ち)1 / 裁判年月日: 昭和60年11月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】法廷等の秩序維持に関する法律に基づく制裁手続は、通常の刑事裁判の手続とは異なる簡易なものであるが、憲法31条等の刑事手続上の保障が及ばないわけではなく、その趣旨に反しない限度で適憲とされる。本法による監置決定は、裁判官の面前等で行われた秩序を乱す言動に対し、法廷の尊厳と審判の適正を確保するために行…
事件番号: 昭和35(秩ち)2 / 裁判年月日: 昭和35年10月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】法廷等の秩序維持に関する法律は、司法の使命とする正常かつ適正な運営を確保するために必要不可欠な権限を定めたものであり、憲法19条、21条、31条等の諸規定に違反しない。 第1 事案の概要:特別抗告人が、法廷等の秩序維持に関する法律(本法)の規定が憲法19条(思想・良心の自由)、21条(表現の自由)…
事件番号: 昭和53(秩ち)2 / 裁判年月日: 昭和53年3月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】法廷等の秩序維持に関する法律及び同法に基づく監置決定は、憲法18条、25条1項、31条、34条、37条、82条1項等の各規定に違反するものではない。 第1 事案の概要:抗告人が、法廷等の秩序維持に関する法律に基づき下された監置決定に対し、憲法15条2項、18条、25条1項、31条、32条、34条、…
事件番号: 昭和35(秩ち)1 / 裁判年月日: 昭和35年9月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】法廷等の秩序維持に関する法律2条1項の制裁規定は、憲法に違反するものではない。法廷の秩序を維持するための裁判所の措置は、司法権の適正な行使を保障する観点から合憲と解される。 第1 事案の概要:本件は、法2条1項に基づき制裁を受けた者が、当該規定が憲法に違反すると主張して特別抗告を申し立てた事案であ…