法人税法(昭和二九年法律第三八号による改正前のもの)第一八条第一項は憲法第三八条第一項に違反しない。
法人税法(昭和二九年法律第三八号による改正前のもの)第一八条第一項と憲法第三八条第一項。
法人税法(昭和29年法律38号による改正前のもの)18条1項,憲法38条1項
判旨
法人税法上の申告義務の規定は、刑事責任を問われるおそれのある事項について供述を強要するものではなく、憲法38条1項に違反しない。
問題の所在(論点)
法人税法18条1項(現行法でも同様の趣旨の規定あり)に基づく所得金額等の申告義務が、憲法38条1項の自己負罪拒否特権を侵害し、違憲ではないか。
規範
憲法38条1項の黙秘権は、何人も自己が刑事上の責任を問われるおそれのある事項について、供述を強要されないことを保障したものである。行政上の目的のために義務付けられた申告が、直ちに刑事責任に関する事項の供述を強制するものに当たらない場合には、同項に違反しない。
重要事実
被告人は、法人税法に基づき、課税標準たる所得金額等の申告義務を負っていた(旧法人税法18条1項)。しかし、被告人は詐偽その他不正の行為によって法人税を免れた等として起訴された。これに対し、弁護側は、法人税法による申告義務の強制は、自己の犯罪事実を告白させることになり、憲法38条1項に違反すると主張して上告した。
あてはめ
法人税法が採用する申告納税制度は、納税義務者の申告に基づき納税義務を確定し、自主的な履行を通じて適正な課税を実現しようとする行政上の制度である。同法18条1項の規定は、この目的のために所得金額等を申告させるものであって、刑事責任を問われる事項の供述を強要する性質のものではない。また、同法48条1項(脱税罰則)は、不正に税を免れた行為自体を処罰するものであり、申告義務の不履行そのものを罰する規定ではない。したがって、申告義務の賦課は刑事手続上の不利益を強いるものとはいえない。
結論
法人税法上の申告義務の規定は、憲法38条1項に違反しない。
実務上の射程
行政上の申告・報告義務と黙秘権の関係について判断した重要判例である。行政上の目的(租税徴収や統計、行政上の監督)のために課される義務が、実質的に刑事訴追を目的としていない限り、黙秘権の侵害にはならないという論理構成で活用すべきである(川崎民商事件判決等へ続く法理)。
事件番号: 昭和38(あ)2430 / 裁判年月日: 昭和40年11月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】法人税法に基づく収税官吏の質問・検査権は、行政目的のためのものであり犯罪捜査を目的とするものではないため、これを適正に行使する限り、憲法38条の自己負罪拒否特権等には反しない。また、当該調査権が犯罪捜査のために悪用された実態が認められない限り、取得された証拠の証拠能力は否定されない。 第1 事案の…
事件番号: 昭和36(あ)1638 / 裁判年月日: 昭和39年6月30日 / 結論: 棄却
一 申告納税制度の下における所得の申告の如く、憲法の規定する納税義務を前提とし、その税額を決定するために所得の申告を求めるが如きは、憲法第三八条第一項にいう「自己に不利益な供述」に当らない(昭和二七年(あ)第八三八号同三二年二月二〇日大法廷判決、刑集一一巻二号八〇二頁参照)。 二 原判決が、被告人と共謀して所得税を逋脱…