一 公判調書に簡易公判手続により審判する旨の決定をする前、刑訴規則一九七条の二所定の処置をした記載がないからといつて、必ずしも右処置が行われなかつたということはできない。 二 被告人が公判における被告事件に対する陳述において、「事実はその通りです。尚有罪で処断されても異議はありません」と述べているときは、刑訴第二九一条の二にいわゆる「有罪である旨を陳述した」ものと認められる。
一 公判調書に刑訴規則第一九七条の二所定の処置をした記載がない場合と右処置の有無 二 刑訴法第二九一条の二にいわゆる「有罪である旨を陳述した」と認められる事例
刑訴法48条,刑訴法291条の2,刑訴規則44条,刑訴規則197条の2
判旨
窃盗罪の既遂時期は、不法領得の意思をもって他人の占有下にある物件を自己の支配内に移した時点であり、必ずしも犯人が物件を自由に処分できる安全な位置に置くことまでは必要としない。
問題の所在(論点)
窃盗罪における「実行の着手」後の「既遂」に至る時期の判断基準、特に「自己の支配内」への移転と「安全な位置」への到達の要否が問題となる。
規範
窃盗罪(刑法235条)の既遂時期は、犯行当時の具体的な事情(犯行場所の状況、物品の大小、時間的関係等)を総合的に考慮し、不法領得の意思をもって事実上他人の支配内にある物件を「自己の支配内」に移したとき(占有の移転時)である。犯人が物件を自由に処分しうる安全な位置に置くことまでは要しない。
重要事実
被告人が他人の占有する物品を窃取した事案において、被告人は当該物件を自己の支配下に移したが、いまだ犯行現場等から離脱して安全な場所にまで持ち去っていない段階で窃盗既遂が認められるかが争われた(具体的な犯行事実の詳細は判決文からは不明)。
あてはめ
本件において被告人が物件を自己の支配内に移した事実は認められる。窃盗罪の既遂は占有の移転によって成立し、その判断は犯行場所や物品の性質等の具体的事情により左右される。本件では、被告人が物件を他人の支配から自己の支配へと移転させた時点をもって、犯行が既遂に達したと評価できる。犯人が追及を免れて安全に物件を処分できる状態にある必要はないため、移転があった以上、既遂罪の成立を妨げない。
結論
被告人の所為は、物件を自己の支配内に移した時点で窃盗既遂罪となる。
実務上の射程
窃盗罪の既遂時期(占有移転の認定)に関するリーディングケースである。答案上では、物品が小型であれば手に取った時点、大型であれば建物外に運び出した時点など、事実関係に即して「自己の支配内」に移ったかを論じる際の規範として用いる。「安全な場所への運搬」を不要とする点は、既遂時期を比較的早期に認める趣旨である。
事件番号: 昭和23(れ)1513 / 裁判年月日: 昭和24年2月8日 / 結論: 棄却
窃盜罪は他人の實力的支配内にある物を、自己の實力的支配内に移せば既遂となるものであつて、犯人が之を自由に處分し得るような安全な地位に置くことを要するものではない。(當裁判所昭和二三年(れ)第六七五號、同年一〇月二三日第二小法廷判決参照)