一 外国為替及び外国貿易管理法第四五条にいう支払手段は、適法に取得されたものだけにこれを限局して解すべきものではない。 二 同条にいう輸出は、それが空路による場合は、外国向けの航空機に同条所定の物件を積載することによつて既遂となるものと解するのが相当である。
一 外国為替及び外国貿易管理法第四五条にいう支払手段の範囲 二 空路によつて同条にいう輸出をなす場合とその既遂時期
外国為替及び外国貿易管理法45条,外国為替及び外国貿易管理法70条18号(旧19号),外国為替及び外国貿易管理法1条,外国為替及び外国貿易管理法6条1項7号
判旨
外国為替及び外国貿易管理法における支払手段の輸出の既遂時期について、空路による場合は、外国向けの航空機に当該物件を積載した時点で既遂に達すると判断した。
問題の所在(論点)
旧外国為替及び外国貿易管理法(現:外国為替及び外国貿易法)45条にいう「支払手段」は適法に取得されたものに限定されるか。また、空路による支払手段の「輸出」の既遂時期はいつか。
規範
「輸出」とは、原則として貨物や支払手段を本邦から外国へ向けて送り出すことをいい、空路を利用する場合においては、特段の事情のない限り、当該物件を外国行きの航空機に積載したことをもって、輸出罪の既遂となる。また、対象となる支払手段は、適法に取得されたものに限定されない。
重要事実
被告人は、外国為替及び外国貿易管理法(当時)の規定に違反し、許可を受けずに支払手段を本邦から外国へ輸出しようとした。被告人は、空路による輸出を企て、外国行きの航空機に当該支払手段を積載した。弁護側は、支払手段が適法に取得されたものに限られるべきであること、および輸出の既遂時期について争い、上告した。
事件番号: 昭和30(あ)341 / 裁判年月日: 昭和33年3月14日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】支払手段や貨物の「輸入」の既遂時期は、税関の関門を通過して外部に持ち出すことによって完了する。したがって、空港の旅具検査所等で税関吏員に発見され、いまだ税関の実力的支配下にある状態では、既遂罪は成立しない。 第1 事案の概要:被告人は、釜山から米国軍票を携帯して羽田空港に到着した。外貨申告手続にお…
あてはめ
まず、同法45条にいう支払手段については、法の目的が外国為替の安定や対外取引の正常な発展にあることから、その取得経緯の適否を問わず、管理の対象に含まれると解するのが相当である。次に、輸出の既遂時期について検討するに、航空機による移動は機体への積載をもって実質的に本邦の管轄から離脱する準備が完了し、不可逆的な送出行為が開始されたといえる。したがって、外国行きの航空機に物件を積載した時点で、輸出行為は既遂に達したものと評価すべきである。
結論
支払手段は適法に取得されたものに限られない。また、空路による輸出は、外国向けの航空機に物件を積載した時に既遂となる。本件では積載が完了しているため、輸出罪の既遂が成立する。
実務上の射程
輸出罪の既遂時期(積載時説)を明確にした判例であり、関税法違反等における輸出入の既遂時期の議論の基礎となる。航空機の場合は「積載時」、船舶の場合は「離岸時(または領海侵脱時)」とする実務上の準則を理解する上で重要である。
事件番号: 昭和31(あ)1069 / 裁判年月日: 昭和37年10月3日 / 結論: 破棄自判
米国軍票等を密輸入しようとして着衣等に隠匿し税関空港内為替管理所(外貨申告所)を通過しても、同税関内旅具検査所において発見され、これを税関外に持ち出すに至らなかつたときは(判文参照)、いまだ外国為替及び外国貿易管理法(昭和三三年法律第一五六号による改正前のもの)第四五条、第七〇条第一九号の無許可輸入罪は成立しない。
事件番号: 昭和29(あ)3810 / 裁判年月日: 昭和33年3月14日 / 結論: その他
一 米国軍票を密輸入しようとして着衣等に隠匿して羽田空港税関内外貨申告所を通過しても、同税関内旅具検査所において職員に発見されたときは、未だ外国為替及び外国貿易管理法第四五条、第七〇条第一九号の無許可輸入罪は成立しない。 二 刑法第四八条二項の規定の適用が除外されている関税法違反の罪並びに外国為替並びに外国貿易管理法違…
事件番号: 昭和33(あ)1248 / 裁判年月日: 昭和34年2月5日 / 結論: 棄却
本邦入国者が、入国に際し、別送して輸入しようとする自動車は、それが入国者の出発地または経由地において積み出されたものでないかぎり、輸入貿易管理令(昭和三一年一一月一四日政令第三四二号による改正前のもの)第一四条第二号別表第二にいわゆる「携帯品」と認めることはできない。