刑法第一五八条第一項の偽造公文書行使罪の法定刑が同法第一六一条第一項の偽造私文書行使罪のそれより重いのは、その保護法益である公文書の信頼度が私文書のそれより高いことに基くものであつて、その文書作成名義者の身分による差別ではない。
刑法第一五八第一項の法定刑が同法第一六一条第一項のそれより重いのは身分による差別か。
刑法158条1項,刑法161条1項,憲法14条
判旨
偽造公文書行使罪(刑法158条1項)の法定刑が偽造私文書行使罪(同161条1項)より重いのは、公文書のより高い信用性を保護するためであり、憲法14条1項に違反しない。
問題の所在(論点)
偽造公文書行使罪の法定刑が偽造私文書行使罪よりも重く規定されていることが、法の下の平等を定めた憲法14条に違反するか。特に、この区別が「身分による差別」に該当するかが問題となる。
規範
刑法158条1項の保護法益は公文書に対する社会的な信用性にある。公文書は私文書に比してその信用度が高いことから、保護法益の重要性に応じた合理的区別として法定刑に格差を設けることは、憲法14条が禁じる不当な差別には当たらない。
重要事実
被告人両名は、公務員が作成すべき文書である外国人登録証明書を偽造し、これを行使した。原判決は刑法158条1項(155条1項)を適用して処断したが、被告人側は、公文書の偽造・行使を私文書の場合より重く処罰することは身分による差別であり、憲法14条に違反すると主張して上告した。
事件番号: 昭和31(あ)236 / 裁判年月日: 昭和33年5月30日 / 結論: 棄却
刑法第一五六条は信用度の高い公文書の無形偽造を私文書と異つて特に処罰することにしたものであつて、その保護法益は公文書の信用性に存し、行為者が公務員であるか否かによつてその保護に軽重を設けた規定ではない
あてはめ
刑法158条1項が重い法定刑を課している理由は、公務員の作成に係る文書が有する高度な社会的信用を保護することにある。この信用性は私文書のそれと質的に異なるものである。したがって、両罪の法定刑の差は、作成者の地位に基づく「身分による差別」ではなく、保護されるべき法益(公文書の信用度)の差異に基づく合理的な区別であると評価される。
結論
偽造公文書行使罪の規定は憲法14条に違反せず有効であるため、同条を適用した原判決に憲法違反の違法はない。上告棄却。
実務上の射程
文書偽造罪における公文書と私文書の区別の合理性を肯定する基礎的な判例である。憲法14条の「合理的区別」を論じる際や、刑法における文書の信用性の重要性を説明する際の根拠として活用できる。身分ではなく保護法益の差異に着目する論理構成は、他の刑事罰の格差問題にも示唆を与える。
事件番号: 昭和24(れ)136 / 裁判年月日: 昭和24年7月2日 / 結論: 棄却
刑の執行猶豫を與えないことが憲法第一四條に違反するものでないことは既に當裁判所の判例(昭和二三年(れ)第七〇號、同年五月二六日大法廷判決)とするところである。