一 原判決の示すところによれば、控訴審が、被告人に第一回公判期日の召喚状を適法に送達したところ、被告人がその公判期日に出頭しなかつたので、そのまま開廷審理の上結審し判決宣告期日を指定告知し、さらにその宣告期日にも被告人が出頭しないのでそのまま判決を宣告したというのであつて、かかる場合判決の宣告は被告人に対し効力を生じ、上訴期間は判決の通知をまたずその翌日より進行すると解すべきこと、大審院以来また当裁判所においても裁判の趣旨とするところであり、新刑訴法の解釈としても、なおこれを変更するの要を認めない。(昭和二四年(れ)第九八六号同年六月七日第三小法廷判決、集三巻七号九五三頁参照) 二 刑法起訴二二二条の判決の通知は、第一審における被告人が本来公判期日に出頭すべき義務があるにかかわわず、刑訴二八四条が所定の軽微な事件につき特にその義務を免除したのに対応し、被告人のためを慮つた特別の規定に過ぎないのであつて、この規定があるからといつて、そのため被告人が右通知を受けた時から上訴期間が進行するものではなく、通常の場合と同じく判決言渡の時から進行するのであり、被告人自ら起訴進行の状態を知る手段を講ずることを要することも変りないのである。
一 裁判宣告期日における被告人の不出頭と上訴期間の起算点 ―いわゆる判決通知との関係― 二 いわゆる判決通知と上訴権回復事由
刑訴規則220条,刑訴規則222条(250条),刑訴規則222条(250号),刑訴法362条
判旨
控訴審において第1回公判期日の召喚状が適法に送達された以上、被告人が出頭せず、かつ判決宣告期日の告知を現実に受けていなくても、上訴期間は判決宣告の翌日から進行する。被告人は自ら訴訟の進行状況を了知すべき手段を講ずる義務があり、判決の通知がないことを理由とする上訴権回復は認められない。
問題の所在(論点)
被告人が適法な召喚を受けたにもかかわらず公判期日に出頭せず、その後の判決宣告期日の告知を直接受けていない場合、上訴期間の起算点は「判決宣告の翌日」か、それとも「判決の通知を受けた日」か。また、判決の通知がないことが「自己又は弁護人が責任を負うことのできない事由」(刑訴法362条)による上訴権回復の理由となるか。
規範
刑事裁判の公判期日は被告人の行為につき審判を行うものであるから、第1回公判期日の召喚状が一たん適法に送達された以上、被告人は出頭しない場合でも当該事件の進行状況に注意し、その後に指定告知される公判期日や判決宣告期日を自ら了知すべき手段を講ずべき義務を負う。したがって、適法な送達後に出頭しない被告人に対する判決宣告は効力を生じ、上訴期間は判決の通知を待たず宣告の翌日から進行する。刑訴規則222条の判決通知は便宜上の規定に過ぎず、上訴期間の起算点に影響を及ぼすものではない。
事件番号: 昭和34(あ)1279 / 裁判年月日: 昭和37年12月14日 / 結論: 棄却
控訴審においては、被告人は、原則として公判期日に出頭することを要せず(刑訴三九〇条本分)、公判期日に対する被告人の召喚は、召喚とはいつても、その性質は、右期日を被告人に通知し自ら欲すれば出頭する機会与える意味をもつに過ぎず(昭和二四年新(れ)第五一九号、同二七年一月二日第一小法廷判決、刑集六巻一二号一四〇一頁)、ただ、…
重要事実
控訴審裁判所が被告人に対し第1回公判期日の召喚状を適法に送達したが、被告人は同期日に出頭しなかった。裁判所はそのまま開廷・審理し、判決宣告期日を指定・告知した。被告人は宣告期日にも出頭しなかったが、裁判所は判決を宣告した。その後、被告人は判決の通知がなかったことを理由に上訴期間の徒過を主張し、上訴権の回復を請求した。
あてはめ
本件では、被告人に第1回公判期日の召喚状が適法に送達されており、被告人は自ら訴訟の進行を把握する義務を負っていたといえる。被告人は判決通知を予期するのみで、期間内に経過を知る努力を尽くしていない。刑訴規則上の判決通知は被告人の便宜を図る特別規定であり、その有無は被告人が自ら訴訟状態を知る手段を講ずべき責任を免除するものではない。したがって、判決通知がなされなかったことは、上訴期間を徒過したことについて「責任を負うことのできない事由」にはあたらないと解される。
結論
控訴審の判決宣告の翌日から上訴期間は進行しており、判決通知がないことを理由とする上訴権回復請求は認められない(棄却)。
実務上の射程
欠席裁判(刑訴法284条や控訴審の特則)における上訴期間の管理に関する基本判例である。実務上、被告人が適法な召喚を受けた後は、被告人側の自己責任原則が強く働き、裁判所からの個別の判決通知を待つという態度は「過失あり」と判断される。答案上は、上訴権回復の要件である「責めに帰すべからざる事由」の存否を検討する際の判断枠組みとして活用する。
事件番号: 昭和32(あ)1602 / 裁判年月日: 昭和35年9月27日 / 結論: 棄却
一 所論「やむを得ない場合」に関して原判決が支持した第一審判決の解釈は正当である。 二 (第一審判決の要旨)被告人並びに弁護人は被告人操縦の乗用自動車と同方向の北行車道上にはその前方に貨物自動車先行しその右側を追越さんと欲し警音器を鳴らすも避譲せずして進路を妨げ、しかも右斜前方には約五〇米を距てて南行車道内を南進し来る…