訴訟費用の負担を命ぜられた者たる被告人から特に申立についての委任をうけなかつた場合に、国選弁護人のなした執行免除の申立は不適法である。
訴訟費用負担の執行免除の申立が不適法な一事例
刑訴法500条
判旨
国選弁護人は、訴訟費用の負担を命ぜられた被告人本人から特段の委任を受けない限り、訴訟費用の執行免除の申立てを行う権限を有しない。
問題の所在(論点)
国選弁護人は、被告人から特段の委任を受けることなく、被告人に代わって訴訟費用の執行免除を申し立てる権限を有するか。弁護人の代理権の範囲が問題となる。
規範
刑事訴訟法に基づく訴訟費用の執行免除の申立て(法500条参照)は、被告人本人の利益に関わる手続であるが、国選弁護人の職務権限は原則として公判手続等の弁護活動に限定される。したがって、判決確定後の執行手続に係る申立てについては、被告人からの個別的な特別の委任がない限り、弁護人が当然に代理して行うことはできない。
重要事実
被告人に対し強盗傷人被告事件において訴訟費用の負担を命ずる裁判が確定した。これに対し、被告人の国選弁護人を務めていた者が、被告人に代わって当該訴訟費用の執行免除の申立てを行った。しかし、当該国選弁護人は、被告人本人から本件申立てに関する特段の委任を受けていなかった。
事件番号: 昭和57(せ)35 / 裁判年月日: 昭和57年5月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】訴訟費用の執行免除の申立てを弁護人が代理して行うには、被告人から当該申立てに関する具体的な委任を受けていることの証明を要し、証明がない場合は不適法として棄却される。 第1 事案の概要:被告人Aほか8名に対する兇器準備集合等の被告事件において、元弁護人であった申立人が、被告人らに科された訴訟費用負担…
あてはめ
本件において、申立人である国選弁護人は、訴訟費用の負担を命ぜられた被告人から、当該申立てについての委任を特に受けていないことが明らかである。執行免除の申立ては判決確定後の執行段階の手続であり、公判段階の国選弁護人の職務権限に当然に含まれるものではないため、個別受任がない以上、申立権限を欠くといえる。
結論
本件申立ては権限のない者によるものであり、理由がないため棄却される。
実務上の射程
弁護人の代理権の限界を示す事例である。特に判決確定後の手続(執行免除や再審請求等)については、公判当時の弁護権限が当然に及ぶわけではなく、別途本人からの委任(または法律上の明文規定)が必要であることを示唆している。答案上は、弁護人の訴訟行為の有効性を論じる際の基礎資料となる。
事件番号: 昭和25(せ)44 / 裁判年月日: 昭和25年11月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑事訴訟法に基づく訴訟費用の執行免除の申立てにおいて、申立人が貧困のため訴訟費用を完納することができないと認められない場合には、当該申立ては棄却される。 第1 事案の概要:窃盗被告事件につき、昭和25年9月26日に言い渡された訴訟費用負担の裁判に対し、申立人はその執行免除を申し立てた。しかし、裁判…
事件番号: 昭和54(せ)65 / 裁判年月日: 昭和54年6月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】訴訟費用の執行免除の申立ては、刑事訴訟法500条2項所定の期間内になされる必要があり、かつ、弁護人が代理して申し立てる場合には、被告人からの申立ての委任を要する。 第1 事案の概要:偽造有価証券行使被告事件の被告人に対し、第一審および原審において訴訟費用負担の裁判がなされた。これに対し、弁護人であ…
事件番号: 昭和29(す)145 / 裁判年月日: 昭和29年5月25日 / 結論: 棄却
申立人主張のような事由(訴訟費用負担の執行免除の申立を刑務官吏によつて妨げられた旨の主張)は、前記訴訟費用の負担を命ずる裁判について検察官のした執行に関する処分を不当とすべき根拠にはならないから、本件申立は理由がないものとして棄却すべきである。