物品税を逋脱した事実が発覚したためになされた税務署長の通告処分(物品税五倍相当の罰金に相当する金額及び書類送達費の納付)を履行しなかつた以上、その後に右物品税だけを納付しても、告発にかかる物品税逋脱犯の刑事責任を免れることはできない。
通告処分の不履行のためなされた告発にかかる逋脱犯の刑事責任と通告後逋脱した物品の納付
昭和24・12・27法律286号による改正前の物品税法18条1項(昭和23法律107号による改正後のもの),国税犯則取締法14条1項,国税犯則取締法17条1項
判旨
物品税法の通告処分を履行しなかった場合には、その後に物品税を納付したとしても、それとは別に同法に基づく罰金刑を科すことは二重処罰等にあたらず適法である。
問題の所在(論点)
税法上の徴収規定に基づき税金を納付した事実がある場合に、通告処分の不履行を理由として、別途刑事罰(罰金)を科すことが許されるか。
規範
行政上の徴収規定に基づく税金の納付と、通告処分不履行に伴う刑事罰としての罰金刑の科刑は、その法的性質及び根拠規定を異にする。したがって、税金の納付があったとしても、刑事罰を科すことは何ら違法ではない。
重要事実
被告人は物品税法違反の罪に問われたが、税務署長による通告処分を履行しなかった。一方で、被告人は行為時に施行されていた物品税法18条3項の規定による徴収に対し、物品税3,510円を納付した。被告人は、当該納税を行ったにもかかわらず、さらに罰金を科されることは違法であると主張して上告した。
あてはめ
被告人が納付した物品税3,510円は、当時の物品税法18条3項の徴収規定に基づくものである。しかし、被告人が税務署長の通告処分を履行しなかった以上、国家は刑罰権を行使し得る。本件で罰金を科す根拠は物品税法18条1項にあり、これは先の徴収規定とは別個の規定である。したがって、納税の事実があっても、刑事罰としての罰金を科すことは論理的に両立し、法的な矛盾はない。
結論
被告人が物品税を納付したとしても、通告処分を履行しなかった以上、別途罰金を科すことは適法である。
実務上の射程
行政上の制裁(または税金の徴収)と刑事罰の併科が問題となる場面での参考となる。本判決は、行政上の納付義務の履行と刑事責任の追及は別個の手続きであることを示しており、いわゆる二重処罰禁止の議論(憲法39条)等において、処罰の目的や根拠規定が異なる場合の判断材料として活用できる。
事件番号: 昭和38(あ)1578 / 裁判年月日: 昭和40年5月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】法人の通告処分履行があっても、別個の違反行為者である代表者個人に対する通告処分の履行がない以上、当該個人を起訴し処罰することは、憲法39条の二重処罰の禁止に抵触しない。 第1 事案の概要:被告人が代表取締役を務める有限会社「家具のA」に対し、通告処分がなされ、同会社はこれを履行した。一方で、代表者…