物品税法(昭和二四年法律第二八六号による改正前のもの)第一八条第一項は、国家が租税債権の確保をはかるために、納税義務者の逋脱行為等を犯罪として刑罰を科することとしたものであり、同条第四項は、逋税した税金を直に徴収することができる旨の行政的措置を規定したものと解すべきである。
物品税法(昭和二四年法律第二八六号による改正前のもの)第一八条第一項および同条第四項の法意
物品税法(昭和24年法律286号による改正前のもの)18条,物品税法18条
判旨
物品税法に基づく逋脱税金の徴収規定は、租税債権確保のための行政的措置であり、刑罰とは性質を異にする。そのため、通告処分を履行せず、その後に税金を納付したとしても、逋脱犯の刑事責任を免れることはなく、二重処罰にも当たらない。
問題の所在(論点)
物品税の逋脱行為に対し、行政的措置としての徴収(通告処分)と刑事罰が併存する場合、その刑事責任を追及することは憲法39条が禁じる二重処罰に該当するか。また、通告処分不履行後の税金納付が刑事責任の消滅に影響するか。
規範
物品税法における逋脱税金の徴収規定は、当然納付すべき税金を直ちに徴収するための行政的措置である。これは国家が租税債権の確保を目的とするものであり、犯罪に対して科される刑罰(刑法上の刑名のあるもの)とはその性質を異にする。
重要事実
被告人は物品税を逋脱した事実が発覚し、税務署長から物品税5倍の罰金相当額および書類送達費の納付を命じる通告処分を受けた。しかし、被告人はこの通告処分を履行しなかった。その後、被告人は物品税を納付したが、逋脱犯として告発され、刑事責任を追及されるに至った。被告人側は、税金の納付と刑事罰の併科が憲法39条の二重処罰禁止に抵触すると主張して上告した。
あてはめ
物品税法18条1項の刑事罰は義務違反に対する制裁である一方、同条4項の徴収規定は行政的措置に過ぎず、刑罰とは性質が異なる。したがって、これらを併用しても二重処罰には当たらない。また、通告処分(罰金相当額等の納付)を履行しなかった以上、その後に本来の義務である物品税を納付したとしても、既に成立している逋脱犯の刑事責任を消滅させる効力は認められない。
結論
通告処分を履行しない以上、その後の税金納付にかかわらず刑事責任を免れず、憲法39条違反にも当たらないため、上告を棄却する。
実務上の射程
行政上の制裁金や徴収金と刑事罰の併科が二重処罰(憲法39条)に当たらないとする論理として、租税法や行政法全般で応用可能。行政的措置が「刑罰」に該当するか否かを目的や法的性質(債権確保か制裁か)から区別する視点を示す。
事件番号: 昭和53(あ)519 / 裁判年月日: 昭和54年3月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】国税犯則取締法15条による収税官吏の通告処分制度は、憲法31条の適正手続の保障に違反しない。 第1 事案の概要:上告人は、国税犯則取締法15条に基づく通告処分が行われたことについて、同条が憲法31条(適正な手続の保障)に違反する旨を主張して上告した。 第2 問題の所在(論点):国税犯則取締法15条…