一 昭和二二年勅令第九号は昭和二〇年勅令第五四二号に基いて発せられた有効な命令である。 二 右勅令違反の所為は平和条約発効後も免訴にならない。
一 昭和二二年勅令第九号の効力 二 右勅令違反と免訴
刑訴法337条,昭和20年勅令542号ポツダム宣言ノ受諾ニ伴ヒ発スル命令ニ関スル件,昭和22年勅令9号 婦女に売淫をさせた者等の処罰に関する件,1946・1・21付「日本に於ける公娼廃止に関する覚書」,昭和27・5・7法律137号 法務府関係諸命令の措置に関する法律
判旨
占領下におけるポツダム勅令(昭和20年勅令第542号)およびこれに基づく命令は、日本国憲法施行後も憲法外の法的効力を有し、平和条約発効後も法律として存続させる措置が講じられた場合には有効に存続する。
問題の所在(論点)
連合国占領下のポツダム勅令に基づく命令(勅令第9号)が、憲法施行後および平和条約発効後において、憲法適合性および効力の存続が認められるか。
規範
連合国最高司令官は、降伏条項実施のため、日本国憲法のいかんに関わらず法律上自由に、自ら適当と認める措置を講じ、日本国民に対し指令を遵守させることができる。したがって、ポツダム勅令およびこれに基づく命令は、憲法施行後も憲法外で法的効力を有する。また、平和条約発効に伴いポツダム勅令が廃止されたとしても、個別の命令について法律として存続させる旨の立法措置(昭和27年法律第81号、同137号等)がなされた場合は、失効せず法律としての効力を有する。
重要事実
被告人は、売淫契約を無効とする連合国最高司令官の覚書に基づき制定された勅令第9号に違反したとして起訴された。弁護人は、(1)当該勅令は憲法に違反し無効である、(2)平和条約の発効によってポツダム勅令が廃止された以上、これに基づく勅令第9号も失効している、と主張してその有効性を争った。
事件番号: 昭和27(あ)4476 / 裁判年月日: 昭和29年4月2日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】ポツダム宣言の受諾に伴い発せられた命令(ポツダム命令)は、平和条約発効後も法律によって存続させる措置が講じられている場合、法律としての効力を有し続ける。 第1 事案の概要:被告人が、昭和21年勅令第9号(ポツダム命令の一つ)の規定に違反する行為を行ったとして起訴された。弁護人は、平和条約の発効によ…
あてはめ
まず、勅令第9号は売淫契約を無効とする連合国最高司令官の要求を実施するために制定されたものであり、ポツダム勅令の目的に適うものであるから、憲法外の効力を有していたといえる。次に、平和条約発効後についても、昭和27年法律第81号により一定の存続効が認められ、さらに昭和27年法律第137号により、法務府関係の命令として法律としての効力を与えられている。したがって、本件勅令は平和条約発効によって当然に失効したものではなく、法律として有効に存続していると解される。
結論
本件勅令第9号は無効でも失効したものでもなく、依然として有効な法規範である。したがって、これに基づく処罰は正当である。
実務上の射程
占領下における「超憲法的」な法的効力の帰趨を示す重要判例である。司法試験においては、現在の憲法秩序と占領下法令の関係が問われる際の前提知識として機能するが、現代の具体的な人権問題に応用するよりも、法の継続性や違憲審査権の限界に関する議論の文脈で引用されることが多い。
事件番号: 昭和27(あ)6264 / 裁判年月日: 昭和32年1月31日 / 結論: 棄却
昭和二二年勅令第九号は平和条約発効後は昭和二七年法律第八一号同年法律第一三七号により法律としての効力を有する。
事件番号: 昭和25(あ)2222 / 裁判年月日: 昭和27年11月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】本判決は、原判決の違憲主張について、過去の大法廷判例を引用して理由がないと判示し、その他の主張も適法な上告理由に当たらないとして上告を棄却した。 第1 事案の概要:上告人は、原判決に憲法違反があるとして上告を申し立てた。具体的事案の詳細は判決文からは不明であるが、弁護人は上告趣意の第一点及び第四点…
事件番号: 昭和27(あ)6755 / 裁判年月日: 昭和28年5月7日 / 結論: 棄却
昭和二二年勅令第九号第二条にいわゆる「婦女に売淫をさせることを内容とする契約」とは、その契約の相手方が当該婦女であると否とを問わず結局において直接又は間接に多かれ少かれ婦女を束縛または強制して売淫をさせる結果を招来し婦女の個人的自由の伸張を阻害すべき内容を有する契約を指称するものである。
事件番号: 昭和25(あ)1384 / 裁判年月日: 昭和26年12月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】いわゆるポツダム勅令(昭和20年勅令第542号)は、憲法に違反せず有効である。 第1 事案の概要:被告人が、ポツダム宣言の受諾に伴う命令に違反したとして起訴された事案。弁護人は、その根拠となる昭和20年勅令第542号が憲法に違反し無効であると主張して上告した。なお、本判決の原文には具体的な犯罪事実…