長期且つ多数回にわたり数多くの患者を診断して、自己創出にかかる「アウトン」その他の皮下注射、薬物の塗布等をしている以上、たとえ右「アウトン」が有効無害であり、またそれが営利を目的とせず特殊な希望者だけを対象として行つたものだとしても、国民医療法第八条第一項にいう医業をした場合に当る。
国民医療法第八条第一項の医業に当る事例
国民医療法8条1項,医師法40条
判旨
医師免許を有しない者が、長期間にわたり多数の患者に対し診断や皮下注射等の医行為を反復継続した場合は、たとえ薬物が無害であり営利目的がなくても「医業」に該当する。また、憲法25条1項は国家の任務を規定するものであり、個々の国民に具体的・現実的な権利を付与するものではない。
問題の所在(論点)
1.医師免許を有しない者が、無害な薬物の使用や非営利目的で行う医行為が「医業」に該当するか。 2.医師法(旧国民医療法)による無免許医業の禁止・処罰が、憲法25条の生存権規定に違反するか。
規範
「医業」とは、医師免許を有しない者が、反復継続の意思をもって、診断、薬剤の塗布、注射等の医行為を行うことをいう。その際、使用される薬物が有効無害であること、営利を目的としていないこと、または特殊な希望者のみを対象としていることは、医業の成立を妨げるものではない。
重要事実
医師免許を持たない被告人が、「アトウン」の塗布や「ボフトニン」の皮下注射、さらには診断等の行為を行った。これらの行為は長期間にわたって行われ、回数も多く、対象となった患者の数も多数に及んでいた。被告人は、当該薬物が無害であることや、営利目的がなく特殊な希望者のみを対象としていたことを理由に、違法な医業には当たらないと主張した。
あてはめ
被告人の行為は、診断や皮下注射といった典型的な医行為を含んでおり、その規模についても長期間・多回数・多数人を対象としていることから、反復継続して行われる「業」としての実体を備えている。たとえ薬物自体が無害であっても、また被告人に営利の目的がなく特定の希望者を対象としていたとしても、素人による医行為の反復は国民の保健衛生上の危険を生じさせるものであり、医業該当性を否定する理由にはならない。また、憲法25条は国家の国政上の義務を定めたプログラム規定であり、個々の国民に具体的権利を与えるものではないため、無免許医業の処罰は憲法に違反しない。
結論
被告人の行為は医業に該当し、これを有罪とした判断は正当である。また、当該処罰は憲法25条に違反しない。
実務上の射程
医師法違反(無免許医業)の成否における「業」の解釈、および憲法25条のプログラム規定説(朝日訴訟・堀木訴訟以前の先駆的判例)の文脈で引用される。実務上は、営利性の有無を問わず、医行為が反復継続される意思をもって行われれば「業」に該当することを示す基準として機能する。
事件番号: 昭和25(あ)3488 / 裁判年月日: 昭和27年7月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】医師法17条にいう「業」とは、反復継続の意思をもって医行為を行うことを指し、営利の目的(生活上の資料を得る目的)や報酬の有無は、その成立を左右しない。 第1 事案の概要:被告人が医術を業とする目的で医行為を行ったとされる事案において、原判決は被告人の行為を医行為と認定した。しかし、原判決が当該行為…
事件番号: 昭和28(あ)3373 / 裁判年月日: 昭和30年5月24日 / 結論: 棄却
患者に対し聴診、触診、指圧等を行い、その方法がマツサージ按摩の類に似てこれと異なり交感神経等を刺激してその興奮状態を調整するもので医学上の知識と技能を有しない者がみだりにこれを行うときは生理上危険ある程度に達しているときは、医行為と認めるのが相当である。