殺人未遂の訴因に対し傷害と認定するについては、訴因変更の手続を経る必要はない。
殺人未遂の訴因に対し傷害の事実を認定する場合と訴因変更の要否
刑訴法312条,刑法203条,刑法199条,刑法204条
判旨
殺人未遂の訴因から傷害罪を認定する場合、公訴事実の同一性が認められる限り、訴因変更手続を経ることなく認定することが可能である。
問題の所在(論点)
殺人未遂罪として起訴された事案において、訴因変更手続(刑事訴訟法312条1項)を経ることなく傷害罪を認定することが許されるか。
規範
公訴事実の同一性(刑事訴訟法312条1項)が認められる範囲内であり、被告人の防御に実質的な不利益を及ぼさない場合には、裁判所は訴因変更手続を経ることなく、訴因と異なる事実を認定することができる。
重要事実
被告人は殺人未遂罪の訴因で起訴されたが、原審(控訴審)は訴因変更の手続を経ることなく、事実認定として傷害罪が成立すると判断した。これに対し、弁護人が訴因変更手続を欠くことは違法であるとして上告した事案である。
あてはめ
本件における殺人未遂の訴因と、実際に認定された傷害の事実は、いずれも同一の暴行等の態様を基礎とするものであり、公訴事実の同一性が認められる。また、殺人未遂罪は傷害罪の性質を内包しており、殺意の有無という主観的要素の差にすぎないため、訴因変更手続を経ずとも被告人の防御にとって不意打ちとはならず、実質的な不利益は認められない。
結論
本件において殺人未遂から傷害を認定することは正当であり、訴因変更手続を要しない。したがって、上告は棄却される。
実務上の射程
重い罪名で起訴された事実の中に、より軽い罪名の構成要件が包含されている場合(縮小認定)の典型例。試験答案上は、公訴事実の同一性の範囲内であることを示した上で、被告人の防御への不利益の有無(不意打ちの成否)を論じる際の論拠として使用する。
事件番号: 昭和27(あ)5121 / 裁判年月日: 昭和29年3月2日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】起訴状に記載された公訴事実と判示された事実との間に同一性が認められる場合、訴因変更の手続きを経ることなく当該事実を認定しても、憲法違反や刑事訴訟法違反には当たらない。 第1 事案の概要:被告人は起訴状記載の公訴事実について有罪判決を受けたが、第一審判決が認定した事実が、起訴状記載の第一公訴事実と完…