一 受訴裁判所内で行う証人尋問を受命裁判官をして行わしめることは法の認めないところであることは所論のとおりであるけれども、本件所論の場合においては、第一審裁判所は、予め検察官弁護人東京高等裁判所訴訟関係人の同意を得た上で、受命裁判官をして証人の尋問をなさしめたものであり、かつ右証人尋問には、被告人弁護人もこれに立会い、しかも、その施行について何ら異議を述べた形跡はなく、また、その後公判において右尋問調書の証拠調が行われた際にも訴訟関係人が異議を述べた事実のないことは記録上明らかであるから、右手続上の瑕疵はこれによつて治癒せられたものと解するを相当する。 二 犯罪捜査の衝にあたる巡査が、とくに被疑者の要望を容れて証拠品の押収を取止めた、本件のごとき場合は、刑法一九七条の三にいわゆる「相当ノ行為ヲ為ササルトキ」に該当することは、原判決の説示するとおりである。
一 受訴裁判所内で受命裁判官による証人尋問を行うことの適否 二 違法な証人尋問についてその手続上の瑕疵が治癒されたものと解せられる一事例 三 刑法一九七条の三にいわゆる「相当ノ行為ヲ為ササルトキ」に当る場合
刑訴法163条1項,刑訴法281条,刑法197条の3
判旨
犯罪捜査を担当する警察官が、被疑者の要望を容れて証拠品の押収を取り止めた行為は、刑法197条の3にいう加重収賄罪の「相当の行為をなさざるとき」に該当する。また、受訴裁判所内での証人尋問を受命裁判官に行わせる手続上の瑕疵は、当事者の同意や異議のない証拠調べによって治癒され得る。
問題の所在(論点)
1. 警察官が被疑者の依頼に応じて証拠品の押収を断念する行為は、加重収賄罪の「相当の行為をなさざるとき」に該当するか。2. 受訴裁判所内で行う証人尋問を受命裁判官に行わせるという法の認めない手続的瑕疵は、当事者の同意や異議のない証拠調べにより治癒されるか。
規範
1. 加重収賄罪(刑法197条の3)における「相当の行為をなさざるとき」(不正な行為)とは、職務上の義務に違反し、または職務の権限を濫用することを指す。2. 刑事訴訟法上の手続上の瑕疵については、予め訴訟関係人の同意を得ており、かつ、その後の証拠調べ手続において異議が述べられなかった場合には、当該瑕疵は治癒される。
事件番号: 昭和26(あ)1657 / 裁判年月日: 昭和28年2月12日 / 結論: 棄却
公判廷外における被告人の自白の任意性の有無の調査は、必ずしも証人の取調によるの要なく、裁判所が適当と認める方法によつてこれを行うことができる。
重要事実
犯罪捜査に従事する巡査が、被疑者から収賄し、その要望を容れて本来行うべき証拠品の押収をあえて取り止めた。また、第一審裁判所は、受訴裁判所内で行うべき証人尋問を、あらかじめ検察官および弁護人の同意を得た上で受命裁判官に行わせた。被告人および弁護人はこの尋問に立ち会ったが異議を述べず、その後の公判における証拠調べでも異議を申し立てなかった。
あてはめ
1. 犯罪捜査にあたる巡査には証拠品を押収すべき職務上の義務がある。それにもかかわらず、被疑者の要望を優先してこれを行わなかったことは、職務上の義務に違背する不正な不作為といえる。2. 受命裁判官による証人尋問は本来法の認めない手続だが、事前に検察官・弁護人の同意があり、尋問時に立ち会いながら異議を述べず、公判での証拠調べ時にも異議がなかった以上、当事者の手続的権利は保障されており、瑕疵は治癒されたと評価される。
結論
1. 巡査の行為は「相当の行為をなさざるとき」に該当し、加重収賄罪が成立する。2. 本件における受命裁判官による証人尋問の手続上の瑕疵は治癒されており、違憲・違法とはならない。
実務上の射程
収賄罪における「職務密接関連性」や「不正な行為」の具体例として活用できる。また、刑事訴訟法における手続的瑕疵の治癒(特に証拠調べに関する同意や異議の欠如の効果)に関する議論において、実務上の修正原理を示す判例として引用可能である。
事件番号: 昭和26(あ)3999 / 裁判年月日: 昭和28年10月27日 / 結論: 棄却
一 背任および臨時物資需給調整法違反が被疑事実によつて勾留された間に被疑者が収賄事実について検察官に対して供述した場合、その一事をもつて直ちに右供述を無効と解すべきではない。 二 刑法第一九七条にいう「職務」には、公務員がその地位に伴い公務として取り扱うべき一切の執務を指称するものである。 三 富山県庁達第五二号「土木…