一 同一被告人に対する二個の銃砲等所持禁止令違反の公訴事実において、その不法所持にかかる日本刀がいずれも別個のものであり、且つ、判示の如くその事実上の支配状態を別異にするときは、たとい不法所持の日時、場所が彼此近接しているとしても、その間に公訴事実の同一性は認められない。 二 暴行脅迫が不法監禁中になされたものであつても、不法監禁の状態を維持存続させるため、その手段としてなされたものでなく、全く別個の動機、原因からなされたものであるときは、右暴行脅迫の行為は、不法監禁罪に吸収されることなく、別罪を構成する。
一 銃砲等所持禁止令違反罪の公訴事実の同一性の有無 二 不法監禁中になされた暴行脅迫行為が別罪を構成する事例
憲法39条,刑訴法256条2項,刑訴法256条3項,刑訴法335条1項,刑訴法337条1号,刑法220条1項,刑法208条,刑法222条,刑法54条1項前段,暴力行為等処罰に関する法律1条1項
判旨
不法監禁の機会に行われた暴行・脅迫であっても、それが監禁状態を維持存続させるための手段としてなされたものではなく、被害者の言動に対する憤激から別個に行われた場合には、不法監禁罪に吸収されず別罪を構成する。
問題の所在(論点)
不法監禁の最中に行われた暴行・脅迫行為が、不法監禁罪の一罪に包括されるか、あるいは別罪として独立して成立するか。行為の目的と監禁状態の維持との関連性が問題となる。
規範
不法監禁罪の手段としてなされた暴行・脅迫は、同罪の構成要件の一部として同罪に包括(包摂)され、別個の犯罪を構成しない。しかし、監禁の継続中になされた行為であっても、それが監禁状態を維持・存続させる手段として行われたものではなく、別の動機に基づき独立して行われた場合には、不法監禁罪とは別に暴行罪や脅迫罪が成立し、併合罪(または観念的競合)の関係に立つ。
重要事実
事件番号: 昭和27(あ)5991 / 裁判年月日: 昭和29年3月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】権利行使の目的で恐喝手段を用いた場合でも、それが正当な権利行使の範囲を逸脱し、権利行使に仮託して財物を請求したと認められるときは、恐喝罪が成立する。 第1 事案の概要:被告人らは、貨物自動車の引渡を請求するにあたり、恐喝的な手段を用いた。被告人らは正当な権利行使であることを主張したが、原審はこれが…
被告人らは、被害者OおよびPを継続的に不法監禁していた。その監禁の最中、被害者らがなした詐欺的・欺瞞的言動に憤激した被告人らは、被害者らに対して暴行および脅迫を加えた。弁護人は、これらの暴行・脅迫は監禁の手段としてなされたものであり、不法監禁罪の一罪のみが成立すると主張して上告した。
あてはめ
本件における被告人らの暴行・脅迫は、監禁中に行われたものである。しかし、これらは被害者らの逃亡を防ぐなど「不法監禁の状態を維持存続させる手段」として行われたものではない。事実関係によれば、被害者の欺瞞的言動に対する「憤激」を動機としてなされたものである。したがって、監禁の手段としての性質を有さず、不法監禁罪に吸収されるべき行為とはいえない。
結論
被告人らの暴行・脅迫は不法監禁罪に吸収されず、別罪として成立する。原判決がこれらを不法監禁罪と独立して認めたことに誤りはない。
実務上の射程
監禁罪と暴行・脅迫罪の罪数関係に関するリーディングケースである。答案上では、暴行等が「監禁の手段」といえるか否かを、行為の動機・目的や監禁継続への寄与度から検討する際の基準となる。本判決は結論として観念的競合(刑法54条1項前段)を認めている点にも留意が必要である。
事件番号: 昭和26(れ)1209 / 裁判年月日: 昭和27年10月3日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】争議行為に伴う暴行・脅迫や不法監禁等の行為は、正当な争議行為の範域を逸脱するものであり、刑法35条及び旧労働組合法1条2項(現1条2項)による正当行為として免責されない。 第1 事案の概要:労働組合関係者らによる争議行為に際し、他者に対して暴行・脅迫(判示第一)及び不法監禁(判示第二)が行われた。…
事件番号: 平成16(あ)2077 / 裁判年月日: 平成17年4月14日 / 結論: 棄却
恐喝の手段として監禁が行われた場合であっても,両罪は,牽連犯の関係にはない。
事件番号: 昭和28(あ)2751 / 裁判年月日: 昭和30年7月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不法監禁罪における「監禁」とは、必ずしも一定の区画内に閉じ込めることを要せず、被害者の身辺を監視して脱出を困難にすることによって、身体の自由を拘束すれば足りる。 第1 事案の概要:被告人らは、被害者Aをいわゆる「つるし上げ」にした際、終始その身辺または周辺にあって同人を監視し続けた。それにより、被…
事件番号: 昭和27(あ)4520 / 裁判年月日: 昭和29年1月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】食糧緊急措置令違反の罪と外国人登録令違反の罪との間には、通常、手段・結果の関係があるとは認められないため、刑法54条1項後段の牽連犯は成立しない。 第1 事案の概要:被告人が、食糧緊急措置令違反の罪および外国人登録令違反の罪を犯したとして起訴された事案である。被告人は、これらの罪が牽連犯の関係にあ…