一 判決に証拠の標目として掲げられている証人の供述中に伝聞にかかる部分がある場合、その部分について特に排除決定、または判決に当該部分を除外する旨の説示がないからといつて、その伝聞にかかる部分をも証拠としたものと断定すべきではない。 二 判決に証拠の標目として掲げられている証人の供述中伝聞にかかる部分を除いた他の部分とその余の証拠とによつて判示事実が充分に認定できる場合には、右証人の供述については、伝聞にかかる部分を除いた部分だけを証拠としたものと解すべきである。
証拠の標目として掲げられている証人の供述中に伝聞にかかる部分がある場合その部分を証拠としたものと解すべきであるか
刑訴法335条1項,刑訴法320条,刑訴法324条2項,刑訴法326条,刑訴法405条3号,刑訴法401条2項
判旨
判決の証拠となった公判廷における証言中に伝聞証拠が含まれる場合でも、直ちに供述全般を証拠としたと断定すべきではない。他の証拠や諸般の事情に照らし、伝聞部分を除いた他の供述部分とその他の証拠で事実認定が可能であれば、伝聞部分を除外して証拠とした趣旨と解するのが相当である。
問題の所在(論点)
公判廷における証言の一部に伝聞証拠が含まれる場合に、裁判所が特段の排除・除外の説示をすることなく当該証言を証拠として引用したとき、伝聞証拠をも含めて証拠としたものとみなされ、証拠法則(伝聞法則)に違反するか。
規範
公判廷における証言の中に伝聞証拠が含まれている場合であっても、裁判所が特に排除決定や除外の説示を行わなかったからといって、当然にその伝聞部分をも証拠としたと解すべきではない。引用された他の証拠や諸般の事情に照らし、伝聞部分を除外した残りの供述部分および他の証拠によって判示事実を認定するに十分である場合には、伝聞部分を除外して証拠とした趣旨と解するのが相当である。
重要事実
被告人の犯罪事実を認定するにあたり、原審は公判廷における証人の証言を証拠として引用した。当該証言の中には伝聞証拠に該当する部分が含まれていたが、原審はその伝聞部分について特段の排除決定や、証拠引用に際して当該部分を除外する旨の説示を行わなかった。弁護人は、このような場合には伝聞証拠を証拠としたものとして違法であると主張して上告した。
あてはめ
本件において、証言中の伝聞部分を除いたとしても、残りの供述部分および他の適法な証拠を総合すれば、判示事実を認定するに十分な証明力が認められる。このような状況下では、裁判所が特段の説示をしておらずとも、実質的には伝聞部分を証拠から除外して事実認定を行ったものと解釈することが合理的である。したがって、伝聞証拠を証拠として採用したという前提に立つ上告人の主張は採用し得ない。
結論
原判決に証拠法則違反の違法はなく、上告を棄却する。
実務上の射程
証言の中に伝聞が含まれる場合でも、判決全体から見て残りの部分で事実認定が可能であれば、伝聞法則違反とはならないという実務上の救済的な解釈を示している。答案上は、証拠能力のない部分を含む証言の取り扱いについて、裁判所がこれを有効に利用したかどうかの判断基準として活用できる。ただし、現代の公判実務では、証拠調べ段階で異議等により範囲が限定されるべきであり、本判例は判決書における証拠の引用・評価の解釈に関するものである点に注意を要する。
事件番号: 昭和24(れ)1850 / 裁判年月日: 昭和24年9月20日 / 結論: 棄却
一 本件記録の中に被告人「A辺B藤」なる者の供述記録が存在しないことは所論の通りである。しかし本件記録には「A部B蔵」に対する司法警察官の訊問調書並びに検事の聴取書があり、公判請求書にも被告人として「A部B蔵」と表示されており、第一審公判調書にも同人の供述記載がある。故に原判決が証拠説明の部分で「原審(第一審)公判調書…
事件番号: 昭和27(れ)9 / 裁判年月日: 昭和27年4月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】共犯者の供述を他の共犯者の自白の補強証拠とすることは、憲法38条3項の規定に違反しない。 第1 事案の概要:被告人および相被告人らが共同して犯罪に及んだとされる事案において、原審は被告人の自白に加えて、相被告人の供述などの各証拠を総合して犯罪事実を認定した。これに対し被告人側は、相被告人の供述を補…
事件番号: 昭和30(あ)556 / 裁判年月日: 昭和30年6月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人の自白を補強すべき証拠が存在する場合には、憲法38条3項及び刑訴法319条2項にいう自白の補強法則に反せず、有罪判決を維持することができる。 第1 事案の概要:被告人Aの自白に基づき有罪判決が下された事案において、弁護人は第一審判決が挙示した証拠の中に自白を補強すべき証拠が存在しないと主張し…