刑法第二五三条は人の地位、身分によつて差別を設けたのではない、如何なる身分、地位にある人でも、自己の業務に関して横領をした時はそれ以上の横領より重く罰せられるのである。又業務の種類によつて差別を設けて居るわけでもない。如何なる業務でも同じなのである。即ち「業務に関する」という行為の属性についての区別であつて、人についての区別ではない。同条は只前記行為の属性を目標として加重要件を定めただけであつて、人によつて差別を設けたものではない。即ち差別の目標は行為の属性にあるので、人の地位、身分にあるのではない。これと同様に刑法の中には行為の属性によつて刑の加重要件を定めた条文は多々ある。例えば第一八六条、第二一一条等の如きである。第二〇五条もその一つに過ぎないのである(なお昭和二五年(あ)第二九二号同二五年一〇月一一日大法廷判決参照)。所論の違憲論は、同条は人による差別を設けたものであるとの誤解に出でたもので、違憲論としては前提を欠くものである。
刑法第二五三条は憲法第一四条に違反するか
憲法14条,刑訴253条
判旨
業務上横領罪を規定する刑法253条は、人による差別を設けたものではなく、行為の属性に基づき加重処罰を定めたものであって、憲法14条1項に違反しない。
問題の所在(論点)
刑法253条(業務上横領罪)が、単純横領罪(252条)と比較して重い刑罰を科していることが、身分による差別を禁じた憲法14条1項に抵触するか。
規範
刑法が特定の行為の属性(「業務に関する」等)に着目し、その反社会性の顕著さや犯情の重さを理由として加重要件を定めることは、合理的な根拠に基づくものであり、法の下の平等を定める憲法14条に違反しない。
重要事実
被告人が業務上占有する他人の物を横領したとして、刑法253条の業務上横領罪に問われた事案。弁護人は、同条が「業務」という身分を有する者のみを重く処罰するものであり、特定の人を差別的に扱うものであるとして、憲法14条違反を主張して上告した。
あてはめ
刑法253条は、特定の地位や身分にある人を差別する趣旨ではなく、どのような身分の者であっても「自己の業務に関して」横領を行った場合に、その行為の属性(職務誠実義務違反や反復可能性等による犯情の重さ)に着目して重く罰するものである。業務を持たない者が同罪に問われないのは単にその機会がないという事実に過ぎず、行為の属性を目標とする処罰要件の設定は、刑法上の他の加重規定(常習犯や業務上過失致死傷等)と同様に合理性を有する。
結論
刑法253条は憲法14条に違反しない。したがって、同条を適用して被告人を処罰した原判決に憲法違反の違法はなく、上告は棄却されるべきである。
実務上の射程
業務上横領罪の合憲性を明確にした判例である。答案上は、本罪が「業務」という身分に基づく加重(刑法65条2項の身分)であると構成しつつ、その重罰化の合理性が憲法14条との関係で問題となる場合に、行為の属性・反社会性の程度に着目した立法趣旨を引用して合憲性を論証する際の根拠となる。
事件番号: 昭和27(あ)6474 / 裁判年月日: 昭和29年4月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑の執行を猶予しないことが、憲法14条1項に掲げられた人種、信条、性別、社会的身分又は門地による差別に当たらない限り、同条に違反するものではない。 第1 事案の概要:被告人に対し刑の執行を猶予しない旨の判決がなされた。これに対し弁護人は、執行猶予を付さないことが平等原則に反し憲法14条に違反する旨…