被告が縫製業者であつても、同人が直に繊維製品の販売乃至売渡業者にあたるとはいえないのみならず、又被告人が判示Aから販売の目的で綿絨二反を買受けた一回の行為があつたことによつて被告人を右の業者であると解することの無理なことも当然であろう。もつとも被告人が営利の目的をもつて指定繊維製品を他に継続的に販売しようと企てた上、買受け行為に及んだという特段の事情が窺えれば、規則第一〇条違反として処罰しうるであろう。しかし原判示事実及び挙示の証拠によるも右の事情があつたか、どうかを知ることができないので、被告人の罪責を判断するを得ないことになる。
繊維製品配給消費統制規則第一〇条の「指定繊維製品ノ販売其ノ他売渡ヲ業トスル者」の意義
臨時物資需給調整法1条,臨時物資需給調整法4条,繊維製品配給消費統制規則10条,繊維製品配給消費統制規則9条1項本文
判旨
「販売其ノ他売渡ヲ業トスル者」とは、営利の目的で継続反覆して販売等を行う者をいい、一回の買受行為のみでは足りないが、営利目的で継続的に販売する意図があれば該当し得る。
問題の所在(論点)
繊維製品配給消費統制規則10条の「販売其ノ他売渡ヲ業トスル者」の意義、および単発の買受行為が同要件を充足するか。
規範
「販売其ノ他売渡ヲ業トスル者」とは、営利の目的をもって継続反覆して指定製品の販売をなす者をいう。他に主たる営業を有するか否か、または登録の有無は問わないが、単一の行為をもって直ちに「業とする者」に該当するとはいえず、客観的に継続性が認められるか、あるいは営利目的で継続的に販売しようと企てた上で買受行為に及んだという特段の事情が必要である。
重要事実
縫製業を営む被告人が、譲渡資格のないAから販売目的で指定繊維製品(綿絨)2反を買受けた。原判決は、被告人が「販売の目的」で買受けた事実をもって、繊維製品配給消費統制規則10条にいう「指定繊維製品ノ販売其ノ他売渡ヲ業トスル者」にあたると判断し、有罪とした。これに対し弁護人が、被告人は単なる縫製業者であり、登録された業者ではないとして上告した。
事件番号: 昭和26(あ)511 / 裁判年月日: 昭和27年2月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】旧物価統制令等における「営業」の意義に関し、営利の目的をもって有償的譲渡(販売)を反復継続する意思で行う場合には、仕入行為が反復されることは要件とならない。 第1 事案の概要:被告人が、営利の目的をもって有償的譲渡(販売行為)を反復して行った事案。弁護人は、販売行為のみならず仕入行為も反復してなさ…
あてはめ
被告人の本業は縫製業であり、直ちに販売業者にあたるとはいえない。判示された事実はAから1回買受けたというのみであり、これをもって直ちに継続反覆して販売をなす「業とする者」と解することは困難である。もっとも、営利の目的をもって継続的に販売しようと企てた上で買受行為に及んだという特段の事情があれば該当し得るが、本件の確定事実や証拠からはそのような事情の有無が不明であり、有罪を維持するには理由不備がある。
結論
被告人を「業とする者」と認めるには、単なる販売目的の買受けだけでなく、継続的販売の企図等の特段の事情が必要である。原判決を破棄し、差し戻す。
実務上の射程
行政法規の「業とする」の解釈において、行為の回数だけでなく、主観的な意図(企図)や目的の継続性を重視する判断枠組みを示す。特定の資格登録を要件とせず、実態に即して判断する点に意義がある。
事件番号: 昭和25(れ)1884 / 裁判年月日: 昭和26年3月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】指定生産資材割当規則と指定繊維資材配給規則は、後者が前者を補完する関係にあり、一方の適用が他方を排除するものではない。また、需要者の地位にある者が割当証明書と引換えずに資材を売買した場合は、割当規則違反が成立する。 第1 事案の概要:被告人は絹織物等の製造業者であり、指定生産資材である生糸等の需要…
事件番号: 昭和25(あ)1520 / 裁判年月日: 昭和26年3月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】肥料配給統制規則等に基づき処罰の対象となる行為は、割当公文書の提示なく硫安を譲渡する現実の行為(引渡し)を指し、その前提となる売買契約そのものではない。 第1 事案の概要:被告人らは、肥料配給統制規則等の規定に反し、割当公文書の提示を受けることなく、硫安を他者に譲渡した。一審判決はこの譲渡行為を処…
事件番号: 昭和25(あ)1650 / 裁判年月日: 昭和26年3月15日 / 結論: 棄却
論旨は原判決をもつて起訴のない事実につき被告人を有罪としたものと前提して原判決は大審院の判例に反するものというのであるが、論旨には原判決の反すると主張する大審院の判例を具体的に挙示していないのであるから、論旨は刑訴規則第二五三条の規定に違反する不適法の上告申立であるといわなければならない。
事件番号: 昭和25(あ)406 / 裁判年月日: 昭和25年10月17日 / 結論: 棄却
本件において第一審判決は適用法令として臨時物資需給調整法第一条、第四条、衣料品配給規則第五条を掲げているが、同規則にいわゆる衣料品とは、その第一条第二項に基いて昭和二二年九月一〇日商工省告示第五八号によつて指定されているのであるから、臨時物資需給調整法の罰則を適用するには、衣料品配給規則第五条のほかに右告示第五八号を掲…