一 所論食肉に関する価格統制令が憲法第二二条に直ちに違反しないことは、当裁判所の判例の趣旨(昭和二四年(れ)第一八九〇号同二五年六月七日大法廷判決、判例集四巻六号九五六頁参照)に徴して明らかである。従つて食肉価格の統制が、その具体的事象(具体的運営面)においてたとえ論旨のように不完全なものがあつたとしてもこれに違反した被告人等を処罰した原判決を目して憲法第二二条に違反したものということはできない。 二 犯情の類似した被告人間の処罰の差異が憲法第一四条に違反しないことは、当裁判書の判例(昭和二三年(れ)第四三五号同年一〇月六日大法廷判決)とするところであつて、この趣旨は、他の多数の違反者が検挙されず或は起訴されなかつた場合の被告人等のみが起訴処罰された場合にも推し及ぼされるべきものである。従つて論旨のようにたとえ他の違反業者が検挙処罰されなかつたように事情があつたとしても、いやしくも、起訴公判に附されてこれが審理の結果被告人等を有罪とした原判決を目して憲法第一四条に違反するものと論ずることはできない。
一 食肉に関する価格統制令による処罰と憲法第二二条 二 多数の同種の違反者が起訴されず被告人らのみ起訴処罰された場合と憲法第一四条
憲法22条,憲法14条
判旨
食肉に関する価格統制令は憲法22条に違反せず、また、多数の違反者が検挙・起訴されない中で特定の者のみが処罰されても憲法14条に違反しない。
問題の所在(論点)
1.食肉の価格統制令が憲法22条の保障する職業選択の自由に違反するか。 2.多数の違反者が存在する中で特定の者のみを起訴・処罰することが、憲法14条の法の下の平等に違反するか。
規範
職業選択の自由(憲法22条)は公共の福祉による制限を受けるものであり、経済的混乱の防止等を目的とした価格統制は許容される。また、法の下の平等(憲法14条)との関係では、犯情の類似した被告人間に処罰の差異が生じること、あるいは多数の違反者が不問に付される中で特定の者のみが起訴・処罰されることがあっても、直ちに違憲とはならない。
重要事実
被告人らは食肉の販売に関し、価格統制令が定める公定価格に違反したとして起訴された。被告人らは、(1)当該価格統制の具体的運営が不完全であり職業選択の自由を侵害すること、(2)他に多数の違反業者が存在するにもかかわらず検挙・処罰されず、被告人らのみが起訴・処罰されるのは法の下の平等に反すること、を理由として違憲を主張した。
あてはめ
1.価格統制令自体は、経済の安定と公共の福祉を目的とするものであり、憲法22条に抵触しない。たとえその具体的運営面において不完全な点があったとしても、そのことのみをもって直ちに当該規制や罰則が違憲になるものではない。 2.憲法14条は相対的な平等を確認するものであり、犯情が類似していても個別の事情等により処罰に差異が生じることは許容される。多数の違反者が検挙・起訴を免れている中で特定の被告人が起訴されたとしても、適法な手続により有罪と認められる以上、平等原則に反するとはいえない。
結論
本件各上告を棄却する。食肉価格統制令による制限は憲法22条に、特定の被告人のみを起訴・処罰することは憲法14条に、それぞれ違反しない。
実務上の射程
経済的自由権への制約に関する初期の判例であり、特に平等原則との関係で「不当な差別的意図」がない限り、行政の裁量に基づく選択的な訴追が合憲であることを示した射程を有する。答案上は、法適用の平等や検察官の公訴提起の裁量に関する論点において、平等原則違反を否定する際の根拠として活用できる。
事件番号: 昭和26(れ)2354 / 裁判年月日: 昭和27年2月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】検察官による公訴の提起不提起の決定は検察官の専権に属し、同一の犯行に関与した被告人相互の間で科刑に差異が生じたとしても、憲法14条の法の下の平等に違反しない。 第1 事案の概要:被告人は、法人の社長Aや常務取締役Bと共に犯行に関与した。しかし、実際上の主体とされる社長Aは不起訴処分となり、同様の役…