一 公判期日が別個の裁判所により同一日時に指定された場合には、弁護人は、特別の事情のないかぎり先に指定された公判期日を遵守しなければならない。 二 弁護人は、公判期日の変更の申請をするに当つては、当時判明している自己に支障のある日時を裁判所に明らかにしなければならない。 三 弁護人が右手続を怠つた結果、裁判所が更に指定した公判期日が既に他の裁判所により指定された公判期日と同一日時であつたため弁護人が右期日に出頭できなかつたところで弁護権を不法に制限したものということはできない。
一 公判期日が別個の裁判所により同一日時に指定された場合には弁護人は何れの期日を遵守すべきか 二 公判期日の変更申請にあたつて明らかにすべき事項 三 弁護権の不法制限とならない一事例
刑訴法273条,刑訴法276条,刑訴法276条1項,刑訴規則179条の4,刑訴規則施行規則3条1号
判旨
弁護人が他の公判期日との重複を把握しながら裁判所に通知せず、自らの懈怠により公判に出頭しなかった場合において、裁判所が期日変更申請を却下し弁護人抜きで審理・判決を行うことは、弁護権の不当な制限には当たらない。
問題の所在(論点)
弁護人が重複する他事件の期日を把握していたにもかかわらず、その通知を怠り期日に出頭しなかった場合において、裁判所が期日変更を認めず弁護人抜きで審理を進めることが、憲法・刑訴法上の弁護権の不当な制限(違法な訴訟手続)に該当するか。
規範
訴訟関係人は、公判期日の変更を申請するにあたっては、その事由及び継続見込期間を具体的に明らかにし、かつ資料により疎明しなければならない(刑訴規則179条の4準用)。特別の事情がない限り、弁護人は先に指定された公判期日を遵守すべき義務を負う。したがって、弁護権の不当な制限か否かは、期日重複の判明時期、裁判所への通知状況、出頭不能が弁護人の懈怠に基づくものか否かといった諸事情を総合して判断される。
重要事実
被告人の控訴審において、第一回公判期日が昭和26年2月6日に指定された。弁護人は、前年12月に受けていた別件民事事件の出頭命令を理由に、2月2日になって初めて期日変更を申請したが却下された。同日の第一回公判は弁護人等不出頭のまま開廷され、次回期日が2月13日に指定された。弁護人は2月13日についても、1月時点で指定されていた別件刑事事件の期日と重複することを理由に期日変更を申請したが、裁判所はこれを認めず、弁護人不在のまま審理・判決を行った。
あてはめ
本件において、弁護人は第一回公判期日の変更申請を行う際、既に判明していた2月13日の別件刑事事件の期日を裁判所に明らかにする義務があった。しかし、弁護人はこの通知を怠り、その結果として裁判所が当該日に第二回公判を指定することとなった。このように、弁護人が出頭できなかったのは自らの懈怠に基づくものであり、裁判所が期日変更申請を容れずに審理判決したとしても、弁護権の行使を不法に制限したものとはいえない。また、当初の指定期日の遵守義務に照らしても、特段の事情がない限り、裁判所の判断に違法はない。
結論
弁護人の懈怠により期日重複が生じた場合、期日変更を認めず審理を進めることは適法である。上告棄却。
実務上の射程
弁護人の正当な権利行使と訴訟遅延の防止の調和を説く。答案上は、公判期日変更(刑訴法276条、規則179条の4)の要件を検討する際、弁護士の職責としての「期日遵守義務」や「誠実義務」の観点から、弁護人側の過失の有無を評価する際の有力な指標となる。
事件番号: 昭和25(あ)1590 / 裁判年月日: 昭和26年7月24日 / 結論: 棄却
記録によれば、原審裁判所が弁護人木原主計の第一回公判期日変更申請を許容しなかつたこと及び、同弁護人がその期日に公判に立会わないことは所論のとおりであるが、国選弁護人により被告人自身選定した右木原弁護人提出の控訴趣意書に基く弁論がなされたこと、その控訴趣意は簡単明白であり特に新たな事実証拠の取調を要する趣旨でもないこと及…