控訴審において、被告人の住居が記録上知れているにかかわらず、誤つてこれを知れざるものとして被告人に対し公示送達の方法により公判期日の召喚手続をなし、被告人の不出頭を理由に、旧刑訴第四〇四条を適用して被告人の陳述を聽かないで審判した場合には、その審判手続は違法であつて、その判決は、刑訴第四一一条により破棄すべきものである。
刑訴第四一一条の適用のある一事例
旧刑訴法320条2項,旧刑訴法78条1項,旧刑訴法404条,新刑訴法411条
判旨
記録上被告人の住居が判明しているにもかかわらず、誤って住居不明としてなされた公示送達は違法であり、これに基づく公判期日の召喚手続は効力を生じない。適法な召喚がないまま被告人の陳述を聴かずに審判を行うことは、判決に影響を及ぼす明白な法令違反となる。
問題の所在(論点)
記録上住居が判明している被告人に対し、誤って住居不明として公示送達を行い、被告人の出頭なしに審理・判決を行うことの違法性(刑事訴訟法における公示送達の要件充足性と審判手続の適法性)。
規範
公示送達は、被告人の住居、事務所及び現在地がいずれも不明な場合に限り認められる補充的な送達手段である。記録上被告人の住居が特定できるにもかかわらず、誤ってこれを行ってなされた召喚手続は無効であり、その無効な召喚に基づき被告人不出頭のまま審理を進行し判決を言い渡すことは、適正な手続を欠く審判手続の違法を構成する。
重要事実
被告人は第一審において新住所(渋谷区)を届け出ており、第一審判決もこれを認めていた。控訴審の弁護人選任届にも同住所が記載されていた。しかし、控訴審裁判所は、被告人の変更前の旧住所(品川区)に召喚状を送達したために不送達となり、住居不明を理由に公示送達の決定を行った。その後、控訴審は公示送達による呼び出しに基づき、被告人が正当な理由なく出頭しないものとみなして、被告人欠席のまま審理を終結し、有罪判決を言い渡した。
あてはめ
本件では、被告人の適法な届出および第一審判決の記載により、控訴審において被告人の住居は記録上明らかであったといえる。それにもかかわらず、裁判所が過失により旧住所へ送達を試み、不送達を理由に公示送達を選択したことは、公示送達の前提条件を欠く。したがって、当該公示送達による召喚は無効であり、被告人が「正当な理由なく」出頭しなかったとは認められない。このような状態で被告人の陳述を聴かずに審理を進めたことは、被告人の防御権を著しく侵害する手続的違法がある。
結論
公示送達及びそれに基づく召喚手続は無効であり、これに基づき被告人不在のままなされた原判決は、審判手続の違法(判決に影響を及ぼす法令違反)があるため破棄を免れない。
実務上の射程
送達の適法性が争点となる事案全般、特に被告人の不出頭を理由とする欠席裁判の適法性を検討する際の規範として機能する。裁判所の過失による公示送達の不備が、憲法上の受刑権や防御権の侵害に直結し、上訴権回復や判決破棄の事由となることを示す重要な先例である。
事件番号: 昭和25(れ)1387 / 裁判年月日: 昭和25年12月21日 / 結論: 破棄差戻
官報に掲載された第一回公判期日の召喚状の謄本に、被告人氏名「来海A」を、海Aと表示したのでは、公示送達の方式として召喚状の謄本を官報に掲載することを、適法に履踐したものということはできない。