一 共同被告人の供述は所論のように弁論を分離して証人として訊問し被告人に反対訊問の機会を確保しなければ証拠とすることができないものではない、なぜなら弁論を分離しなくても共同審理の際に共同被告人は相互に反対訊問の機会が与えられているのであるから(刑訴応急措置法第一一条第二項)他の共同被告人との関係において、その供述に証言としての証拠能力を否定すべき理由がないからである。そしてこのことは当裁判所の判例の趣旨に照して明かである。(昭和二三年(れ)第七七号同二四年五月一八日大法廷判決最高裁判所判例集第三巻第六号七四三頁参照) 二 共同被告人の公判廷における供述であるからといつて証拠能力を欠くものとわいえない。 三 共犯者たる共同被告人の公判廷における供述と盗難届等によつて被告人を処罰することは、憲法第三八条第三項に違反しない。
一 共同審理を受けた共同被告人の供述の証拠能力 二 共同被告人の公判廷における供述の証拠能力 三 共犯者たる共同被告人の公判廷における供述と盗難届等によつて被告人を処罰することは憲法第三八条第三項に違反するか
刑訴応急措置法11条2項,刑訴応急措置法10条3項,旧刑訴法337条,憲法37条2項,憲法38条3項
判旨
共同被告人の公判供述は、弁論を分離して証人として尋問せずとも、共同審理の際に反対尋問の機会が確保されている以上、証拠能力が認められる。
問題の所在(論点)
刑事訴訟法上の問題として、弁論を分離していない共同被告人の公判供述に証拠能力が認められるか。また、共犯者の供述を証拠とする際に憲法38条3項の適用があるか。
規範
共同被告人の供述は、必ずしも弁論を分離し証人として尋問して被告人に反対尋問の機会を確保しなければ証拠とすることができないものではない。共同審理において共同被告人は相互に反対尋問の機会が与えられているからであり、他の被告人との関係においてその証拠能力を否定すべき理由はない。また、共犯者の供述に罪責転嫁の危険があるとしても、それは裁判官が判断すべき証明力の問題であって、証拠能力や憲法38条3項の適用の問題ではない。
重要事実
被告人が共犯者らと共同して犯行に及んだとされる事案において、原審は弁論を分離することなく、共同被告人の一人であるAが公判廷で行った供述を、盗難届等の他の証拠と総合して被告人の有罪認定の証拠とした。これに対し被告人側は、共同被告人の供述を証人尋問の手続きを経ずに証拠とすることは反対尋問権の侵害であり、また共犯者の供述のみで有罪とすることは憲法38条3項(自白の補強証拠)に違反すると主張して上告した。
あてはめ
本件では、原審における共同被告人Aの公判供述が証拠として採用されている。共同審理の過程においては、刑事訴訟応急措置法11条2項(当時)に基づき、共同被告人相互に反対尋問の機会が保障されている。したがって、あえて弁論を分離して証人尋問の手続きを踏まなくても、被告人の防御権は確保されており、証拠能力を認めることができる。また、共犯者の供述は憲法38条3項にいう「本人の自白」には当たらないため、他の補強証拠と総合して事実を認定する限り、同条に違反するものではない。
結論
共同被告人の公判供述は、弁論を分離せずとも証拠能力を有し、これと他の証拠を総合して有罪を認定することは適法である。上告棄却。
実務上の射程
共同被告人の公判供述の証拠能力に関するリーディングケースである。答案上は、伝聞例外の問題(321条等)以前の前提として、共同被告人の供述が当然に証拠能力を有すること、および反対尋問の機会(憲法37条2項)が共同審理内の質問権行使によって実質的に担保されていることを論じる際に引用する。
事件番号: 昭和26(れ)2525 / 裁判年月日: 昭和27年6月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】共同被告人の供述のみに基づいて被告人の犯罪事実を認定することは憲法38条3項に違反する可能性があるが、他に補強証拠が存在する場合には当該認定は適法である。 第1 事案の概要:被告人Aおよび被告人Bが起訴された事件において、弁護人は、原判決が共同被告人Aの供述のみに基づいて被告人Bの犯罪事実を認定し…
事件番号: 昭和24(れ)2673 / 裁判年月日: 昭和25年3月2日 / 結論: 棄却
一 公判において檢察官のする被告事件の要旨の陳述は、豫審終結決定書が豫審請求書と内容が同一である限り、たとえ右決定が無効のものであつても、その決定書に基いてされても差支ない。 二 昭和二二年五月三日の前に豫審が終結しても、その決定書の送達が同日前になされなかつたときは、豫審終結決定は効力を生せず、同日以後は豫審の請求に…