起訴前被疑者の勾留尋問をした判事がその事件の第二審の審判に関与しても憲法第三七条第一項の違反にならない。
被疑者の勾留尋問をした判事の審判関与と憲法第三七条第一項
憲法37条1項,刑訴法207条,刑訴法280条,刑訴法20条7号,刑訴規則187条1項,刑訴規則187条2項,刑訴規則187条3項
判旨
被疑者の勾留尋問を担当し勾留状を発付した裁判官が、同一事件の第二審の審判に関与したとしても、憲法上の問題はなく違法ではない。
問題の所在(論点)
被疑者段階で勾留尋問及び勾留状の発付を行った裁判官が、同一被告人の第二審(控訴審)の審判に関与することは、裁判の公正を害し、憲法31条等の適正手続きに反するか。
規範
裁判の公正を確保するための除斥制度に関し、裁判官が事件の予備手続(勾留尋問・勾留状発付等)に関与したことは、当然にはその後の公判審理への関与を禁止する理由にはならない。
重要事実
被告人の起訴前において、被疑者(後の被告人)に対する勾留状を発付し、かつ勾留尋問を行った裁判官が、その後の当該被告人に対する第二審(控訴審)の審判に関与した。
あてはめ
勾留状の発付や勾留尋問は、起訴前の捜査段階における手続であり、被告人の有罪・無罪を最終的に判断する本案の審理そのものではない。したがって、これらに関与した裁判官が後に第二審の裁判に関与したとしても、直ちに裁判の公正を妨げるような憲法違反の事態は生じない。判例(昭和25年4月12日大法廷判決)の趣旨に照らしても、このような予備的関与は裁判の排除を要する事由には当たらないと解される。
結論
被疑者の勾留尋問をした裁判官が第二審の審判に関与しても、憲法違反には当たらず適法である。
実務上の射程
刑事訴訟法20条各号の除斥事由の解釈において、「前審の裁判」には起訴前の勾留状発付等は含まれないとする解釈を補強する材料として用いる。裁判の公平性への疑念については、具体的態様により忌避(刑訴法21条)の問題となり得るが、本判決は職権除斥の対象ではないことを明確にしている。
事件番号: 昭和26(あ)175 / 裁判年月日: 昭和27年7月15日 / 結論: 棄却
宇治山田簡易裁判所裁判官Aが逮捕状並びに勾留状を発しながら本件第一審の審理判決をしたことは所論のとおりであるが、そのために同裁判官が職務から除斥されることがないことは勿論忌避の理由があるものとも認められない。
事件番号: 平成16(あ)2716 / 裁判年月日: 平成17年8月30日 / 結論: 棄却
裁判官が公訴棄却の判決をし,又はその判決に至る手続に関与したことは,その手続において再起訴後の第1審で採用された証拠又はそれと実質的に同一の証拠が取り調べられていても,再起訴後の審理において,刑訴法20条7号本文所定の除斥原因に当たらない。