適法な証拠調を経ていない証拠を他の証拠と綜合して犯罪事実を認定した違法があつても、その証拠調を経ない証拠を除外してもその犯罪事実を認めることが出来る場合には、右の違法は、判決破棄の理由にならない。
綜合認定をした数個の証拠中に証拠調を経ていないものがあつても判決破棄の理由にならない一事例
刑訴法317条,刑訴法335条1項,刑訴法379条
判旨
証拠調を経ていない証拠を他の証拠と総合して犯罪事実を認定する訴訟手続上の法令違反があっても、当該証拠を除外してもなお犯罪事実を認めることができる場合には、その違反は判決に影響を及ぼさない。
問題の所在(論点)
適法な証拠調べを経ていない証拠に基づいて犯罪事実を認定した訴訟手続の違反がある場合、常に判決を破棄すべき理由(判決に影響を及ぼすべき法令違反)となるか。
規範
刑事訴訟法379条(及び405条、411条等)における「判決に影響を及ぼすべきこと」の判断において、適法な証拠調べを経ていない証拠が総合認定に用いられた場合であっても、当該証拠を証拠から除外して判断してもなお有罪の結論を維持できるときは、その手続違反は判決に影響を及ぼすものではないと解する。
重要事実
被告人が有罪判決を受けた事案において、原審が犯罪事実を認定する際、適法な証拠調べの手続きを経ていない証拠(具体的には供述調書添付の上申書等)を他の証拠と総合して用いたとして、弁護側が訴訟手続の法令違反を理由に上告を申し立てた。なお、被告人は自白のみで有罪とされたわけではなく、複数の証拠に基づき判断されていた。
あてはめ
本件では、原審が犯罪事実を認定するに際して数多くの証拠を総合して判断しており、被告人の自白のみに依拠したものではない。弁護人が主張する証拠(上申書等)について証拠調べ手続の不備があったとしても、当該証拠を除外した他の適法な証拠群によって犯罪事実の認定が可能であるならば、その瑕疵は判決の結論を左右するものではない。したがって、実質的な判決への影響は認められない。
結論
本件の訴訟手続上の瑕疵は、判決に影響を及ぼすことが明らかであるとはいえないため、判決破棄の理由とはならず、上告は棄却されるべきである。
実務上の射程
刑事訴訟における相対的控訴理由(379条)の「影響」の有無を判断する際の基準を示す。証拠調べ未了等の手続違背があった場合でも、証拠の分離可能性と残存証拠による事実認定の可否を検討し、結論が維持可能であれば瑕疵は治癒されるという実務上の枠組みを提示している。
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