一 刑訴第二五六条第四項および第三一二条に「罰条」の記載を要求したのは、訴因の明確なる特定を図り起訴の範囲を一層限定するためである。 二 酒税法第六三条ノ二のごとく徴役および罰金の併科を定めた規定は、刑訴第二五六条第四項および第三一二条にいう「罰条」にあたらない。
一 刑訴第二五六条第四項および第三一二条にいう「罰条」の意義 二 刑訴第二五六条第四項および第三一二条にいう罰条にあたらない一事例
刑訴法256条4項,刑訴法312条,酒税法63条ノ2
判旨
刑事訴訟法256条4項及び312条にいう「罰条」とは、訴因を明確に特定し起訴の範囲を限定するために記載されるものを指す。したがって、罰金の併科規定のように訴因の特定と直接関係のない規定はこれに当たらず、裁判所が検察官に命じることなく当該規定を適用しても違法ではない。
問題の所在(論点)
刑事訴訟法256条4項及び312条にいう「罰条」の意義、並びに、訴因の特定に直接関わらない併科規定の適用にあたり、裁判所が検察官に罰条追加の命令(刑訴法312条2項)を要するか。
規範
刑事訴訟法256条4項、312条に規定される「罰条」とは、訴因の明確な特定を図り、起訴の範囲を一層限定するために付加的に記載されるものを指す。よって、訴因の特定と直接に関係のない罰則規定(併科規定等)は、同条にいう「罰条」には当たらない。
重要事実
被告人が酒税法違反等の罪で起訴された際、検察官は罰金80万円を求刑した。これに対し、第一審裁判所は、検察官に対し訴因変更や罰条の追加を命じることなく、酒税法63条の二(懲役及び罰金の併科規定)を適用し、被告人を懲役6月及び罰金に処した。弁護人は、裁判所が検察官に対し同罰条の追加を命じることなく適用したことは、刑事訴訟法312条2項に違反するとして上告した。
あてはめ
酒税法63条の二のような懲役と罰金の併科を定めた規定は、犯罪事実(訴因)の特定そのものには直接関与するものではない。本件では、訴因の範囲自体に変動はなく、適用される刑罰の選択の問題にすぎない。したがって、同規定は法312条にいう「罰条」には該当せず、裁判所が検察官に対し追加を命じず、かつ職権でこれを適用したとしても、訴因変更手続等の違法は生じない。また、併科の情状について必ずしも具体的な明示を要しないとする先例にも照らし、原判決の判断は正当である。
結論
酒税法の併科規定は刑訴法上の「罰条」に当たらず、裁判所が訴因変更命令等を経ずにこれを適用することは違法ではないため、上告を棄却する。
実務上の射程
訴因変更が必要となる「罰条の変更」の射程を限定した判例である。答案上では、罪名や構成要件を画する罰条の変更には312条の手続が必要だが、刑の加重減免規定や併科規定など、事実認定(訴因)の同一性に影響しない法律適用の修正は、裁判所の職権行使の範囲内であると論じる際に活用できる。
事件番号: 昭和26(あ)616 / 裁判年月日: 昭和28年3月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法36条が禁ずる「残虐な刑罰」とは、その実質が量刑不当の主張にすぎない場合には、適法な上告理由には当たらない。 第1 事案の概要:被告人が憲法36条違反(残虐な刑罰の禁止)等を理由として上告を申し立てた事案である。弁護人は、第一審判決における法令違反や憲法違反、および量刑不当を主張したが、これら…