一 証拠決定、並にこれが実施をしたのが何れも法廷外の訴訟行為であるときは、裁判所の構成に変更があつても、公判手続の更新を要しない。 二 控訴審でした検証調書に被害者の供述が記載されていても、同裁判所は別にその被害者を証人として訊問し、その判決において、「右検証の結果と右証人の証言とに徴し、第一審判決の事実認定には誤りがない。」と判断した場合には、その判決は、右検証調書中の被害者の供述を除いた、裁判官自ら実験した検証の結果と証人として尋問した被害者の証言とを判断の資料としたものと解すべきである。 三 被告人が勾留されている事件の控訴審において、公判延でした証拠決定に基き、検証とその検証現場における証人尋問を実施した際、裁判所が法廷外で職権により新な証人を尋問しようとして、検察官及び弁護人の何れも「然るべく」との意見を聴いた上、その証人尋問を決定し、即日その場で検察官、弁護人立会の上その証人を尋問したときは、予め被告人に対し右証人尋問の日時場所を通知せず又被告人をその尋問に立ち会わせなくても、憲法第三七条第二項に違反しない。 四 原審が被告人の弁護人砂山博をして、被告人本人の控訴趣意書及び同弁護人の控訴趣意書に基いて弁論をさせながら、原判決には弁護人の控訴趣意についてのみ判断を示し、被告人の控訴趣意については判断を示していないことは所論のとおりである。しかし被告人の控訴趣意は、事実誤認の主張で弁護人の控訴趣意第一点の内容と同様である。そして右第一点について原判決は判断を示しているので、原判決は被告人の控訴趣意についても判断を示したと同様に帰するから原判決の右瑕疵はこれを以つて、原判決を破棄しなければ著しく正義に反するものといえない。(昭和二五年(あ)第一四四号同年七月六日第一小法廷判決、同二五年(あ)第四二号同年一〇月三日第三小法廷判決参照)
一 法廷外の訴訟行為と公判手続の更新の要否 二 被害者の供述記載を含む検証調書と判断の資料に供した「検証の結果」の意義 三 控訴審において勾留中の被告人に対し、尋問の日時場所を予め通知しないで法廷外で決定実施した証人尋問と憲法第三七条第二項 四 弁護人の控訴趣意と内容同一なる被告人の控訴趣意に対して特に判断をしない控訴判決と刑訴四一一条
刑訴法315条,刑訴法321条2項,刑訴法157条,刑訴法392条1項,刑訴法411条1号,憲法37条2項
判旨
裁判所が被告人の勾留中に法廷外で証人尋問を行う際、弁護人に立会の機会を与えて反対尋問権を実質的に保障していれば、被告人本人に日時場所を通知せず、かつ立会わせなくても、憲法37条2項に違反しない。また、法廷外の証拠調べ後に裁判官の構成が変更された場合でも、その後の公判期日で更新手続を適法に行えば足りる。
問題の所在(論点)
1. 被告人が勾留中の場合、法廷外での証人尋問に被告人を立会わせず、日時場所の通知も行わないことは憲法37条2項に反するか。 2. 法廷外の訴訟行為(証拠決定・実施)の際に裁判所の構成に変更があった場合、公判手続の更新を要するか。
規範
1. 憲法37条2項は被告人の証人審問権を保障するが、被告人が勾留中である等の事情がある場合、弁護人に日時場所を通知して立会の機会を与え、被告人の審問権を実質的に害しない措置を講じれば、被告人本人の立会いは必須ではない。 2. 裁判官の構成が変更された場合の公判手続の更新(刑訴法315条)は、公判期日における審理を対象とするものであり、法廷外での証拠決定や証拠調べの実施自体に際して裁判所の構成に変更があっても、直ちに更新を要するものではない。
重要事実
被告人は事後強盗罪で起訴され、控訴審において、原審裁判所は法廷外での現場検証および証人尋問を決定した。当該手続は、一部の裁判官が交代した構成で実施されたが、検察官および弁護人が立ち会い、弁護人には直接尋問の機会が与えられた。その後、さらに裁判官の構成が変更された後の第3回公判期日において、裁判所は刑訴法315条に従い公判手続を更新した上で、法廷外で作成された検証調書および証人尋問調書の証拠調べを行い、判決を言い渡した。被告人側は、法廷外の尋問への被告人の不出席や、裁判官の交代等を理由に上告した。
あてはめ
1. 本件では、被告人は当時勾留中であったが、法廷外の証人尋問には弁護人が立ち会い、直接尋問する機会が与えられていた。これにより被告人の審問権は実質的に保障されている。また、後の公判期日で当該調書の証拠調べが行われ、被告人は内容を知り得たが、再尋問の請求もなされていない。したがって、憲法37条2項違反はない。 2. 法廷外での証拠決定や検証・尋問は「公判手続」そのものではなく、これらを実施する際に裁判所の構成が変わっても、刑訴法315条による更新は不要である。本件では、判決を言い渡す最終的な裁判体の構成のもとで、第3回公判期日に適法な更新手続を経て証拠調べが行われており、手続に違法はない。
結論
被告人の証人審問権は実質的に保障されており、憲法37条2項に違反しない。また、公判手続の更新も適法に行われており、原判決に瑕疵はないため、上告を棄却する。
実務上の射程
証人審問権(反対尋問権)の保障の程度について、「実質的な機会の付与」があれば足りるとする基準を示す。特に被告人が身柄拘束下にある場合の例外的な訴訟運営の許容性を認める。また、刑訴法315条の更新が必要となる基準時を、法廷外の活動ではなく公判期日を軸に判断する実務上の指針となる。
事件番号: 昭和27(あ)480 / 裁判年月日: 昭和27年5月27日 / 結論: 棄却
論旨第七点は証拠調の際に被告人を出頭させなかつたことを憲法違反と主張しているので、記録を調べてみると、原審は第一回公判で本件につき事実の取調をする旨を宣し、昭和二六年一〇月二七日裁判所外において証拠調をしたのであるが、所論のとおり被告人はこれに立会していない。しかし、当時、松江刑務所に在監中であつた被告人に対し予め一〇…