第一審において訴因の追加がなされたところ、控訴審において右は公訴事実の同一性の範囲外の事実にかかり違法の手続であるとして第一審判決が破棄差戻された後、第一審においてその事実につき改めて追起訴がなされたとしても、同一の事実につき二重の起訴があつたものとはいえない。註。関税法違反(密輸入)の公訴事実に対し差戻後の第一審において同一船舶による被告人本人の密入国の事実が追起訴されたもの。
二重起訴にあたらない一事例
憲法39条,刑訴法312条1項,刑訴法338条3号
判旨
外国人が連合国最高司令官の承認を受けずに本邦に入った以上、居住権の有無にかかわらず外国人登録令上の登録義務違反が成立する。また、訴因追加が公訴事実の同一性を欠き不適法と判断され、改めて適法に起訴された場合は、二重起訴や一事不再理の原則には反しない。
問題の所在(論点)
1. 外国人登録令3条(現行の入管法関連規定に相当)の違反に関し、被告人の居住権の有無が犯罪の成否を左右するか。 2. 訴因追加が不適法とされ破棄差戻しとなった後に提起された公訴が、憲法39条後段(二重処罰の禁止・一事不再理)に抵触するか。
規範
1. 外国人登録令3条違反(密入国)の成否は、連合国最高司令官の承認の有無という客観的事実によって決し、当該外国人が居住権を有するか否かは構成要件の成否に影響しない。 2. 刑事訴訟法上、当初の訴因追加請求が公訴事実の同一性を欠くために却下され、その後に別途提起された公訴は、適法な最初の起訴として扱われ、憲法39条後段の二重処罰禁止等には抵触しない。
重要事実
被告人は、連合国最高司令官の承認を受けずに日本に入国し、貨物を船舶で輸送した事実等について、外国人登録令違反等で起訴された。手続過程において、検察官が行った訴因追加請求が「公訴事実の同一性を欠く」として差戻控訴審で否定され、実質的な追起訴としても手続不備があるとの判断を受けた。その後、改めてなされた公訴提起について、被告人側は二重起訴であり憲法39条に違反すると主張して上告した。
事件番号: 昭和26(あ)5299 / 裁判年月日: 昭和28年9月11日 / 結論: 棄却
一 有税物件を密輸入しその関税を逋脱した以上、たといそれがいわゆる占領軍物資で、後に占領軍に引き渡されたとしても、関税逋脱罪が成立する。 二 訴訟において、最後的に確定しなければならない事実は、必ずしも直接証拠のみによつて、これを認定しなければならないものではなく、ある証拠によつて先ず他の事実を認定し、その事実からの推…
あてはめ
1. 実体法上の判断として、外国人が承認を受けずに入国した事実は明白であり、これによって同令3条違反及び12条1号の罰則該当性は基礎付けられる。居住権という私法上または行政上の地位は、承認なき入国という違反事実を阻却しない。 2. 訴訟法上の判断として、前訴における訴因追加請求は公訴事実の同一性がないために許されず、適法な追起訴としても認められなかったことが確定している。差戻後の手続は、この判断に拘束されるため、本件の公訴は最初の適法な起訴としての性質を有し、二重起訴という前提を欠く。
結論
被告人の入国に承認がない以上、居住権の有無にかかわらず外国人登録令違反は成立する。また、不適法な訴因追加後の再起訴は二重起訴にあたらず、憲法39条違反にも該当しないため、上告を棄却する。
実務上の射程
主に刑事訴訟法における「公訴事実の同一性」と「差戻判決の拘束力」の文脈で参照される。不適法な訴因追加がなされた場合の是正手続と、それに基づく再起訴が二重起訴にならないことを示す実例として利用できる。
事件番号: 昭和26(あ)1444 / 裁判年月日: 昭和28年2月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法37条1項が保障する「公平な裁判所の裁判」とは、偏頗や不公平のおそれのない組織・構成をもつ裁判所による裁判を意味し、個別の事件における具体的内容の公正さを指すものではない。 第1 事案の概要:被告人らの弁護人が、原審における事実の認定や法令の解釈が公平でないことを理由として、憲法37条1項が定…
事件番号: 昭和28(あ)1294 / 裁判年月日: 昭和37年12月12日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】第三者の所有物を没収する場合において、当該第三者に対して告知、弁解、防御の機会を与える規定がないまま没収することは、憲法31条および29条に違反する。 第1 事案の概要:被告人が関税法違反等に問われた事案において、第一審判決は、博多税関支署が押収した貨物(ネクタイ、鉛筆、生地等)および船舶「F丸」…