一 被告人が中地区警察署に対し若い者三〇名程つれてA小学校にフイルムを沒収に行く旨を通知したことはその前後の関係から観察して警察署からB青年団側に告げられるであろうことは被告人が十分認識していたものであることを推測するに十分である。そして被告人が警察署に告知した右ことがらは警察側から青年団員C等に告知されていることは挙示の証拠により明らかである。なお脅迫罪における害悪の告知は被害者に対し直接になす必要なく被告人おいて脅迫の意思を以て害悪を加うべきことを知らしめる手段を施し被害者が害悪を被るべきことを知つた事実があれば足るのであるから、被告人の害悪告知がC等に対し直接になされないとしても脅迫罪の成立をさまたげるものではない。 二 判決に証拠と犯罪事実との関係が明らかにされている以上、併合罪の関係にある各個の犯罪事実について個々各別にその証拠を摘示する必要はない。
一 第三者を介してする脅迫罪における害悪の告知 二 併合罪の事実認定と証拠説明
刑法222条1項,旧刑訴法360条1項
判旨
脅迫罪における害悪の告知は、必ずしも被害者に対して直接行う必要はなく、被告人が脅迫の意思をもって害悪を加えることを知らしめる手段を講じ、被害者がその内容を覚知すれば足りる。また、正当な利害関係に基づく抗議であっても、その手段が刑罰法規に触れる場合には違法性を阻却しない。
問題の所在(論点)
1. 害悪の告知が、第三者(警察官等)を介して間接的になされた場合に、脅迫罪の構成要件を充たすか。 2. 被告人に映画上映に関する利害関係がある場合、脅迫的手段による抗議の違法性が阻却されるか。
規範
1. 脅迫罪における「害悪の告知」は、被害者に対し直接になす必要はない。被告人において脅迫の意思を以て害悪を加うべきことを知らしめる手段を施し、被害者が害悪を被るべきことを知った事実があれば、本罪が成立する。 2. 権利行使の目的や利害関係がある場合であっても、その方法・手段は合法的でなければならず、刑罰法規に抵触する手段を用いた場合には、違法性及び責任は阻却されない。
重要事実
被告人は、青年団による映画上映を阻止しようと考え、警察署に対し「若い者30名ほど連れてフィルムを没収しに行く」旨を電話で通知した。この情報は、警察を通じて青年団員らに伝わった。また、被告人は、使者を通じて青年団員に対し、フィルムを没収する旨を伝えさせ、従わない場合には多数人の腕力をもって不測の事態を引き起こすことを暗示し、被害者らを畏怖させた。被告人は、自らが映画上映について利害関係を有すること等を理由に、違法性阻却等を主張した。
あてはめ
1. 被告人は警察署に対し、大人数で押しかけフィルムを没収する旨を告知している。これは警察から青年団側に伝達されることを十分に認識して行われたものであり、実際に被害者らに伝わっている。告知は直接である必要はなく、伝達手段を講じ、被害者がそれを覚知した以上、害悪の告知に当たる。 2. 被告人に映画上映に関する利害関係があり、抗議の権利があるとしても、多数人の腕力による実力行使を背景とした脅迫という手段は非合法的である。したがって、正当な権利行使の範囲を逸脱しており、違法性は阻却されない。
結論
1. 害悪の告知が間接的になされた場合でも、脅迫罪は成立する。 2. 利害関係に基づく抗議であっても、脅迫的手段を用いる以上、刑責を免れない。
実務上の射程
間接脅迫の成否および権利行使と違法性阻却の限界に関する重要判例である。答案上は、脅迫罪の実行行為(害悪の告知)の解釈として「直接性を要しない」点を示す際に引用する。また、自救行為や正当な権利行使の抗弁に対し、手段の相当性(合法性)の観点からこれを排斥する論法として活用できる。
事件番号: 昭和27(あ)1580 / 裁判年月日: 昭和28年8月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】恐喝罪(刑法249条2項)の成立には、暴行・脅迫による害悪の告知が、相手方から財産上の利益を得る目的をもって行われることを要する。 第1 事案の概要:被告人らが、相手方に対して害悪を告知する行為(本件害悪通知行為)に及んだ事案。被告人らに、当該行為を通じて財産上の利益を得る目的があったかどうかが争…