二つの派の抗争が熾烈になつている時期に、一方の派の中心人物宅に、現実に出火もないのに、「出火御見舞申上げます、火の元に御用心」、「出火御見舞申上げます、火の用心に御注意」という趣旨の文面の葉書を発送しこれを配達させたときは、脅迫罪が成立するものと認めるを相当する。
脅迫罪が成立する事例。
刑法222条
判旨
脅迫罪における害悪の告知は、一般人を畏怖させるに足りるものであることを要するが、文言上は「出火見舞」であっても、当時の対立状況等の背景事情に照らして放火を示唆するものと認められる場合は、同罪が成立する。
問題の所在(論点)
文言上は「見舞」や「注意」という平穏な表現を用いている場合に、刑法222条にいう「害悪の告知」として、一般人を畏怖させるに足りる性質を備えているといえるか。
規範
刑法222条の脅迫罪は、同条所定の法益に対して害悪を加えることを告知することによって成立し、その害悪は「一般に人を畏怖させるに足る程度」のものであることを要する。文言が直接的でない場合でも、告知の経緯、周囲の状況、当事者間の関係等の諸事情を総合して、客観的に危害の発生を予感させるものであれば害悪の告知に当たる。
重要事実
被告人は、二つの派閥間の抗争が熾烈になっていた時期に、対立する派の中心人物の自宅に対し、現実に出火の事実がないにもかかわらず、「出火御見舞申上げます、火の元に御用心」および「出火御見舞申上げます、火の用心に御注意」という趣旨を記載した2枚の葉書を郵送した。
あてはめ
本件では、(1)二つの派閥による抗争が熾烈を極めていたという緊迫した状況下で、(2)一方の派の中心人物という攻撃の対象となりやすい人物に対し、(3)火災の事実がないのに「出火見舞」を送付している。このような状況下で「火の用心」を促す文面の葉書を送ることは、単なる見舞いではなく、暗に「放火する」という危害を告知するものと解される。したがって、受領者が「火をつけられるのではないか」と畏怖するのが通常であり、一般人を畏怖させるに足りる害悪の告知といえる。
結論
本件文面の葉書を送付する行為は、一般に人を畏怖させるに足る性質のものであると認められるため、被告人に脅迫罪が成立する。
実務上の射程
文言の字義通りではなく、背景事情(コンテクスト)から害悪の告知を認定する際のリーディングケースである。答案上は、告知の際の具体的状況(抗争、対立関係、時間的・場所的近接性)を拾い上げ、それが「一般人を基準として畏怖を抱かせる客観的な危害の予感」に繋がるかを論証する際に用いる。
事件番号: 昭和24(れ)2654 / 裁判年月日: 昭和25年3月28日 / 結論: 棄却
所論水増し課税や徴税目標額に基く課税方法が不當なものであつても、その課税方法竝に課税額等の變更をなさしむる爲め税務署係官を脅迫した場合は職務強要罪にあたる。