統制額を超過してある物品を買い入れた罪とその物品を統制額を超過して販売した罪とは併合罪となる。
統制額超過買入の罪と統制額超過販売の罪との関係
物価統制令33条,物価統制令3条,物価統制令4条,刑法45条前段,刑法54条
判旨
統制額超過の買入行為と販売行為は当然に随伴する関係にはなく、両罪は併合罪となる。また、業務上の保管者が目的物を搬出・隠匿し、第三者へ売却した場合には業務上横領罪が成立する。
問題の所在(論点)
1. 統制額超過の買入行為と販売行為が併合罪となるか、あるいは随伴行為として一罪となるか。 2. 業務上の保管者が共謀して目的物を搬出・隠匿した上で売却した場合、業務上横領罪が成立するか。 3. 法人の業務に関し、実質的に買受けを行った者に正犯性が認められるか。
規範
1. 物価統制令違反における統制額超過買入行為と超過販売行為は、必ずしも常に一連の不可分な行為として随伴するものではない。したがって、両行為がなされた場合には、個別の犯罪として併合罪(刑法45条前段)の関係に立つ。 2. 業務上保管する物を、共謀の上で保管場所から搬出して隠匿し、これを第三者に売却する行為は、不法領得の意思の発現として業務上横領罪(刑法253条)を構成する。
重要事実
被告人Aは、C農業会の専業部長として小豆を業務上保管していた。Aは、E食品工業の専務取締役Fと共謀し、当該小豆を農業会の支所倉庫から搬出して隠匿した。その後、Aらは隠匿した小豆を被告人D等に売却し、横領した。また、Aは別途、畳表の統制額超過買入および販売行為を行っていた。弁護人は、買入と販売は随伴する行為であり一罪であること、および小豆の買受人は別人でありDらは幇助に過ぎないこと等を主張して上告した。
事件番号: 昭和26(れ)1927 / 裁判年月日: 昭和27年3月14日 / 結論: 棄却
物価統制令三条所定の「契約」とは、その物に関し処分権限ある者より適法に買受けたる場合のみに限らず、広く価格の統制ある物につき、そのものの、処分行為に関する契約を指すものであることは、同令の立法精神(同第一条参照)に照し疑のないところであるから、本件司厨長等に本件精米につき適法な処分権限のあるなしにかかわらず、苟しくもそ…
あてはめ
1. 統制額超過買入と販売は、性質上、一方がなされれば当然に他方が伴うという関係にはない。本件の畳表の取引においても、買入行為と販売行為は独立した行為として認められるため、併合罪とした原判断は適法である。 2. Aは、農業会の役職として小豆を占有(保管)する立場にあった。この小豆を本来の保管場所から搬出して隠匿し、さらに売却する行為は、委託の趣旨に反して領得する行為であり、業務上横領の事実が認められる。 3. 証拠によれば、被告人Dらは法人の業務に関して自ら小豆を買い受けており、単なる幇助者ではなく買受の主体(正犯)であると評価できる。
結論
被告人らの上告はいずれも棄却される。買入・販売行為の併合罪関係および業務上横領罪の成立を認めた原判決に違法はない。
実務上の射程
物価統制令に関連する古い判例ではあるが、罪数論において「一方の行為が他方の行為に当然に随伴するか」という基準で併合罪の成否を判断する手法は、現代の経済事犯や薬物事犯等の罪数判断においても参考となる。また、業務上横領における「搬出・隠匿」が領得行為の着手または既遂を基礎付ける事実となる点も実務上重要である。
事件番号: 昭和25(あ)3297 / 裁判年月日: 昭和27年12月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】横領罪における「領得」とは、不法に領得する意思が外部に表現される行為を指し、会社倉庫から薬品類を不法に持ち出す行為はこれに該当する。 第1 事案の概要:被告人は、会社に勤務し同社の物品を管理・占有する立場にあったが、不法にこれを領得する意思をもって、会社倉庫内に保管されていた薬品類を無断で外部に搬…