一 生産管理として多数の威力をもつて会社の事業の管理即ち支配を排除した以上、刑法第二三四条の業務妨害が成立する。 二 経営権と労働権との対等を保障している現行の法律秩序からすれば、両者の間に労働協約による特別の定めがないかぎり、企業経営、生産行程の指揮命令は使用者側の権限に属するのであるから、同盟罹業が有効でないからといつて使用者側に属する生産手段の管理を排除してそれを組合側の実力支配の下におくところの、いわゆる生産管理は適法の争議行為といえない。 三 労働関係調整法第七条は争議行為の定義を掲げただけであるから、具体的争議行為の適法性は別個の観点から判断すべきである。
一 生産管理と威力による業務妨害罪の成立 二 生産管理の違法性 三 労働関係調整法第七条と争議行為の適法性
労働関係調整法7条,労働組合法(昭和24年法律174号による改正前のもの)1条,刑法234条,刑法233条
判旨
いわゆる生産管理は、使用者側に専属する生産手段の管理を排除して実力支配の下におくものであり、争議行為としての適法性の限界を超えるものである。したがって、正当な争議行為とは認められず、刑法上の建造物侵入罪や業務妨害罪が成立する。
問題の所在(論点)
労働組合による「生産管理」が正当な争議行為として認められ、刑法上の建造物侵入罪(130条前段)および威力業務妨害罪(234条)の違法性が阻却されるか。
規範
企業の経営および生産行程の指揮命令権は、特段の定めがない限り経営担当者に属する。そのため、使用者側に専属する生産手段の管理を排除し、組合側の実力支配の下におく行為(生産管理)は、名目の如何にかかわらず争議行為の適法性の限界を超えたものと解すべきである。また、労働関係調整法7条の「阻害」に該当するか否かは、争議行為の正当性の有無とは別個の判断基準である。
重要事実
事件番号: 昭和25(れ)98 / 裁判年月日: 昭和26年7月18日 / 結論: その他
一 論旨は更に進んで、以上の如き被告人等の行為(スクラムを組み労働歌を高唱して気勢を挙げた行為)が暴力でないとすれば威力であるから、公務員執行妨害罪が成立しないとしても業務妨害罪が成立すると主張するのであるか、業務妨害罪にいわゆる業務の中には、公務員の職務は含まれないものと解するを相当とするから、公務員の公務執行に対し…
被告人らは労働組合員として争議行為に及び、いわゆる生産管理を実施した。具体的には、会社側に属する生産手段の支配を排除し、組合側の実力支配の下に置いた。また、その過程で、違法な行為をする目的で会社の建造物に立ち入り、多数の威力を以て会社の事業管理を妨げた。
あてはめ
本件における被告人らの行為は、使用者側の生産手段に対する支配を完全に排除したものであり、現行の法律秩序において経営側に専属する経営権を侵害している。これは単なる義務不履行にとどまらず、多数の威力を以て会社の事業管理を排除したものであるといえる。したがって、労働組合の正当な行為の範囲を逸脱しており、刑法上の責任を免れない。
結論
本件行為は正当な争議行為とはいえず、建造物侵入罪および威力業務妨害罪が成立する。
実務上の射程
生産管理の違法性を明確にした判例であり、労働争議の手段が使用者の財産権・経営権を根底から否定するものである場合には、正当性が否定されることを示す。答案では、憲法28条に基づく団体行動権の限界を論ずる際、手段の相当性の基準として「経営権の侵害」を挙げる際に引用すべきである。
事件番号: 昭和27(れ)79 / 裁判年月日: 昭和27年10月31日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】労働組合による生産管理は、争議の一手段としてなされたものであっても、労働関係における争議行為として容認し得ない。また、労働関係の当事者たる地位を失った者による行為は、憲法28条の保障の対象外である。 第1 事案の概要:被告人らは、労働組合の争議の一手段として、会社側の意に反して工場等の施設を占拠・…
事件番号: 昭和28(あ)56 / 裁判年月日: 昭和31年10月24日 / 結論: その他
某会社がその従業員一三名に対し解雇通知および同会社への立入禁止の通告をしたのに対し、同会社労働組合側では右解雇通知の当否を調査し、不当なものについては法定の手続によつて救済を求むべく事後の対策を協議中にもかかわらず、右解雇および立入禁止の通告を受けた二名およびこれを関知した同会社従業員でもなく同会社労働組合員でもない一…
事件番号: 昭和59(あ)627 / 裁判年月日: 昭和62年3月12日 / 結論: 棄却
県議会委員会の条例案採決等の事務は、威力業務妨害罪にいう[業務]に当たる。