県議会委員会の条例案採決等の事務は、威力業務妨害罪にいう[業務]に当たる。
県議会委員会の条例案採決等の事務と威力業務妨害罪にいう[業務]
刑法234条
判旨
公務員が行う公務であっても、被告人らに対して強制力を行使する権力的公務でないものは、刑法233条・234条にいう「業務」に該当する。
問題の所在(論点)
地方議会の委員会における条例案採決等の事務が、威力業務妨害罪(刑法234条)にいう「業務」に該当するか。公務が同罪の保護対象に含まれるかという点、及びその判断基準が問題となる。
規範
刑法233条及び234条にいう「業務」には、公務員が執行する公務も含まれる。もっとも、公務の種類によって保護の適否を区別すべきであり、強制力を行使する「権力的公務」については公務執行妨害罪(95条)による保護に委ねるべきであるが、これに当たらない非権力的な公務については、威力業務妨害罪等の「業務」に含まれると解すべきである。
重要事実
被告人らは、新潟県議会総務文教委員会における条例案の採決等の事務を妨害した。当該事務は、県議会の委員会運営という一連の手続きの一環として行われるものであったが、その性質上、被告人らに対して直接的な物理的強制力を伴う権力行使を内容とするものではなかった。
事件番号: 昭和52(あ)939 / 裁判年月日: 昭和53年5月22日 / 結論: 棄却
日本専売公社徳島地方局社内取締規程に基づいて発せられた本件立入禁止命令及び退去命令の同公社職員による執行は、それが民間企業にみられるのと同じ労使間の紛争を処理するためにとられた措置であつても、公務執行妨害罪における職務にあたる。
あてはめ
本件で妨害の対象となった新潟県議会総務文教委員会の事務は、条例案の採決等である。この事務は、議会運営の円滑な遂行を目的とするものであるが、被告人ら個人に対して義務を課したり、実力をもって強制を行使したりする性質の「権力的公務」ではない。したがって、当該公務は非権力的な事務であり、威力業務妨害罪によって保護されるべき「業務」に当たると評価される。
結論
県議会の委員会における採決等の事務は「業務」に該当し、これを威力をもって妨害する行為は威力業務妨害罪を構成する。
実務上の射程
公務と業務妨害罪の関係を論じる際のリーディングケースである。答案上は、まず公務一般が「業務」に含まれるかを論じ、次に「権力的公務」と「非権力的公務」を区別し、本判例を根拠に『強制力を伴わない公務であれば業務に含まれる』と論じるのが定石である。議会運営や一般事務など、相手方に義務を強制しない場面で活用する。
事件番号: 昭和25(れ)1902 / 裁判年月日: 昭和27年2月22日 / 結論: 棄却
一 生産管理として多数の威力をもつて会社の事業の管理即ち支配を排除した以上、刑法第二三四条の業務妨害が成立する。 二 経営権と労働権との対等を保障している現行の法律秩序からすれば、両者の間に労働協約による特別の定めがないかぎり、企業経営、生産行程の指揮命令は使用者側の権限に属するのであるから、同盟罹業が有効でないからと…
事件番号: 昭和41(あ)1510 / 裁判年月日: 昭和43年3月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】公共企業体等労働関係法17条1項に違反してなされた争議行為であっても、労働組合法1条2項の適用は排除されないが、暴力の行使を伴う行為は正当性の限界を越えるため刑事免責の対象とならない。 第1 事案の概要:被告人らは、公共企業体等労働関係法17条1項の規定に違反して争議行為を行った。その際、被告人ら…
事件番号: 昭和37(あ)426 / 裁判年月日: 昭和38年12月26日 / 結論: 棄却
刑法第二三四条の「威力」とは、犯人の威勢、人数および四囲の状勢よりみて、被害者の自由意思を制圧するに足る犯人側の勢力と解する相当とし、かつ右勢力は客観的にみて被害者の自由意思を制圧するに足るものであればよいのであつて、現実に被害者が自由意思を制圧されたことを要するものではないと解すべきである(昭和二五年(れ)第一八六四…
事件番号: 昭和52(あ)469 / 裁判年月日: 昭和53年11月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】使用者はストライキ期間中も操業を継続する自由を有し、そのための対抗措置は威力業務妨害罪による保護対象となる。一方、争議行為としての操業阻止行為は、その動機・態様・周囲の状況等を総合考慮し、法秩序全体の見地から許容される範囲を超えれば、刑法上の違法性を阻却されない。 第1 事案の概要:旅客運送会社A…