日本専売公社徳島地方局社内取締規程に基づいて発せられた本件立入禁止命令及び退去命令の同公社職員による執行は、それが民間企業にみられるのと同じ労使間の紛争を処理するためにとられた措置であつても、公務執行妨害罪における職務にあたる。
公務執行妨害罪における職務にあたるとされた事例―いわゆる徳島専売公社事件―
刑法95条1項,日本専売公社法18条1項
判旨
日本専売公社の職員が社内取締規程に基づき発した立入禁止命令及び退去命令を執行する行為は、刑法95条1項にいう「職務」に該当する。たとえ当該命令が労使間の紛争処理のために行われたものであっても、その適法な職務執行性は否定されない。
問題の所在(論点)
法令により公務員とみなされる公法人の職員が行う、内部規定に基づく立入禁止・退去命令の執行が、刑法95条1項(公務執行妨害罪)の客体たる「職務」に該当するか。特に、労使紛争解決の一環としてなされた場合にその性質が左右されるか。
規範
刑法95条1項の「職務」とは、公務員がその権限に基づいて行使する一切の事務を指す。法令により公務に従事する者とみなされる公法人(現業公社等)の職員が行う行為であっても、それが内部規定等の正当な権限に基づくものであり、単なる現業的業務の枠を超えて公法上の管理権の行使として行われる場合には、同条の「職務」に該当する。
重要事実
日本専売公社(当時)の職員が、社内取締規程に基づき、被告人らに対して立入禁止命令及び退去命令を発し、これを執行した。被告人側は、当該命令の執行は民間企業と同様の労使紛争を処理するための措置にすぎず、刑法上の保護に値する「職務」には当たらないと主張して争った。
事件番号: 昭和59(あ)627 / 裁判年月日: 昭和62年3月12日 / 結論: 棄却
県議会委員会の条例案採決等の事務は、威力業務妨害罪にいう[業務]に当たる。
あてはめ
本件における立入禁止命令及び退去命令の執行は、社内取締規程という根拠に基づく公社管理権の行使である。このような命令の執行は、単に民間企業の業務と実態が同一である現業的業務(輸送等)とは異なり、施設の秩序維持を目的とした公法人的な管理作用としての性質を有する。したがって、たとえその背景に労使間の紛争が存在し、その解決のためにとられた措置であったとしても、直ちに「職務」としての性格が失われるものではない。
結論
本件各命令の執行は公務執行妨害罪によって保護されるべき「職務」にあたり、これに抵抗する行為は同罪を構成する。上告棄却。
実務上の射程
公務執行妨害罪における「職務」の範囲について、現業公社の行為であっても管理権行使の側面が強いものは含まれることを示した。答案上は、現業公務員の行為が「職務(95条)」か「業務(234条)」かを区別する際、行為の具体的性質(権力的・管理的な側面があるか)に注目して論じる際の根拠となる。
事件番号: 昭和45(あ)2199 / 裁判年月日: 昭和53年3月3日 / 結論: 破棄自判
公共企業体等労働関係法一七条一項違反の争議行為として行われた本件威力業務妨害及び不退去行為は、刑法上の違法性を欠くものではない。
事件番号: 昭和46(あ)1257 / 裁判年月日: 昭和50年4月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】公共企業体等労働関係法17条1項に違反する争議行為であっても、直ちに正当性が否定されるわけではなく、労働組合法1条2項の刑事免責の適用があり得る。ただし、組織統制力の行使として許容される限界を超える有形力の行使を伴う場合は、違法不当なものとして刑事免責の対象とならない。 第1 事案の概要:郵政職員…
事件番号: 昭和43(あ)837 / 裁判年月日: 昭和48年4月25日 / 結論: 破棄差戻
一 勤労者の組織的集団行動としての争議行為に際して行なわれた犯罪構成要件該当行為について刑法上の違法性阻却事由の有無を判断するにあたつては、その行為が争議行為に際し行なわれたものであるという事実をも含めて、当該行為の具体的状況その他諸般の事情を考慮に入れ、それが法秩序全体の見地から許容されるべきものであるか否かを判定し…