論旨第二点の刑訴第三三五条第一項の解釈についてはすでに当裁判所の判例として「第一審判決は証拠の標目を一括挙示しており、従つて判文上は証拠と事実との関連性は明らかでないが、記録と照らし合せて見ればどの証拠によつてどの事実が認定されたか極めて明白である」場合は刑訴第三一七条及び第三三五条第一項に反するものではないと判示されている(昭和二五年(あ)第一、〇六八号昭和二五年九月一九日第三小法廷判決)。そして本件第一審判決の証拠理由の説示を見ると右判例にいうように、記録と照し合せて見ればどの証拠によつてどの事実が認定されたか極めて明白である。従つて、本件事案としては第一審判決のような証拠の標目挙示をもつて刑訴第三三五条第一項に違反するものとはいえないばかりでなく当裁判所の判例の趣旨にも反しないものである(論旨引用の大審院昭和一九年(れ)第四四五三一号同年一〇月一二日判決及び東京高等裁判所昭和二四年(を)新第一〇号同年八月二三日判決は、当裁判所の前記判決に牴触する限り判例としての効力を失つたものである。
証拠理由の判示方――最高裁判所の判例と相反する大審院判例の効力
刑訴法335条1項,刑訴法405条2号,刑訴法405条3号
判旨
刑事判決における証拠の挙示につき、個々の事実と証拠の対応を個別具体的に明示せず証拠の標目を一括して挙示する手法であっても、記録との照合により認定事実との関連性が極めて明白であれば、刑事訴訟法335条1項に違反しない。
問題の所在(論点)
刑事判決において証拠の標目を一括して挙示することが、罪となるべき事実を認定した証拠を示さなければならないとする刑事訴訟法335条1項の要請を満たすか。
規範
刑事訴訟法335条1項が求める「証拠の標目」の挙示は、判文上、個々の証拠と認定事実との具体的な関連性が一見して明らかでない場合であっても、記録と照らし合わせることで、どの証拠によってどの事実が認定されたかが「極めて明白」であれば、同条の趣旨に反しない。
重要事実
第一審判決において、罪となるべき事実の認定に用いた複数の証拠について、個々の事実との対応関係を逐一説明することなく、証拠の標目を一括して挙示した。被告人側は、このような証拠の関連性が不明確な挙示方法は刑事訴訟法335条1項の規定に違反し、判決理由の不備にあたると主張して上告した。
あてはめ
本件第一審判決の証拠理由の説示を検討すると、証拠の標目が一括して挙げられているに過ぎない。しかし、訴訟記録と照らし合わせて検討すれば、各証拠がどの認定事実を基礎付けるものであるかは客観的に特定可能であり、その関連性は極めて明白である。したがって、判文の記載のみをもって直ちに証拠の不提示や理由不備の違法があるということはできない。
結論
本件の証拠挙示方法は刑事訴訟法335条1項に違反せず、上告を棄却する。
実務上の射程
実務上、判決書における証拠の挙示は簡略化が認められており、本判決はその許容限度を示したものである。答案上は、理由不備(刑訴法378条4号)の文脈で検討される。もっとも、複雑な事案で証拠と事実の対応が記録から直ちに判明しない場合には、本判決の法理の下でも違法となり得る点に留意が必要である。
事件番号: 昭和28(あ)4276 / 裁判年月日: 昭和30年7月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】第一審判決における証拠の挙示が不十分であっても、事案が比較的簡単で、証拠標目がどの事実に連結するかが概ね明瞭であれば、刑訴法335条1項の法令違反は「著しく正義に反する」ものとはいえず、上告理由にはならない。 第1 事案の概要:被告人Aら4名が起訴された事案において、第一審判決は有罪を宣告したが、…