一 原判決の確定しない事実関係を前提とする判例違反又は憲法違反の主張は、刑訴第四〇五条に定める上告適法の事由に該当しない。 二 一審が犯罪の証明がないという理由で無罪とした事実について、第二審が事実の取調をしないで刑訴第四〇〇条但書に従い有罪の判決をすることは、適法である。 三 しかし、本件起訴にかかる訴因は、第一、第二事実とも昭和二二年勅令第一号違反の事実であり、ただ、第一事実は同時に公職選挙法違反の訴因をも包含するものであることは本件提訴状就中その罪名並びに罪条の記載によつて明らかである。されば、原判決が判示第一事実において起訴状記載の第一事実中の公職選挙法違反の事実を認定した外起訴状第一事実中の同勅令違反の事実と起訴状第二事実中の同勅令違反の事実の一部とを併せて一個の同勅令違反の犯罪事実を認定して、これを公職選挙法違反と同勅令違反の一所為数法の場合であるとしたからといつて、何等訴因を変更したとはいえない。
一 原判決の確定しない事実関係を前提とする上告理由の適否 二 控訴審における事実認定と事実取調の要否 三 訴因変更とならない事例
刑訴法405条,刑訴法400条但書,刑訴法393条,刑訴法256条,刑訴法312条
判旨
起訴状に記載された複数の事実から一部を組み合わせて一つの犯罪事実を認定し、起訴状記載の罪名を適用したとしても、それが訴因の範囲内にある限りは訴因変更の手続きを要しない。
問題の所在(論点)
裁判所が起訴状に記載された複数の事実から一部を抽出・統合して犯罪事実を認定する場合に、刑事訴訟法312条1項の訴因変更手続きが必要となるか。
規範
裁判所が起訴状に記載された特定の事実関係を組み合わせて、予備的または択一的な記載がない場合であっても、それが当初の訴因に包含される範囲内であれば、訴因変更の手続きを経ることなく当該事実を認定し、適用罰条を判断することができる。
重要事実
事件番号: 昭和26(あ)1768 / 裁判年月日: 昭和26年7月3日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】昭和22年勅令第1号15条1項にいう「政治上の活動」とは、現実の政治に直接又は間接の影響を及ぼすものと認められるような行動を指す。また、憲法37条1項の「公平な裁判所」とは、裁判所の組織や構成において偏頗の恐れがないことを意味する。 第1 事案の概要:被告人が昭和22年勅令第1号(公職に関する就職…
被告人は昭和22年勅令第1号違反および公職選挙法違反の罪で起訴された。原判決は、起訴状に記載されていた第1の事実(公選法違反および勅令違反を包含)と、第2の事実(勅令違反)の一部を併せて、一個の勅令違反の犯罪事実として認定した。これに対し弁護人は、このような事実認定は訴因変更の手続きを経ずになされたものであり、違法であると主張して上告した。
あてはめ
本件において、起訴状の罪名および罰条には当初から公職選挙法違反および昭和22年勅令第1号違反が記載されていた。原判決が認定した事実は、起訴状の第1事実のうち公選法違反に該当する部分と、第1事実および第2事実のうち勅令違反に該当する部分を整理して認定したに過ぎない。この認定は起訴状に記載された訴因の範囲を逸脱するものではなく、被告人の防御に実質的な不利益を与えるものでもないため、訴因変更があったとはいえない。
結論
原判決の事実認定の手続きに違法はなく、訴因変更の手続きを経ずに犯罪事実を認定したことは適法である。
実務上の射程
訴因の同一性や防御権の侵害が問題となる場面での基礎的判断を示す。起訴状の事実関係を整理して認定する程度であれば、312条の訴因変更は不要であるとする実務上の基準として活用できる。
事件番号: 昭和26(あ)2559 / 裁判年月日: 昭和26年9月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】単なる事実誤認の主張は刑訴法405条の上告理由に当たらない。また、記録を精査しても同法411条を適用して原判決を破棄すべき事由は認められない。 第1 事案の概要:被告人が、原判決(詳細は判決文からは不明)に事実誤認があるとして上告を申し立てた事案。上告趣意書において事実関係の誤りを主張したが、法律…
事件番号: 昭和25(あ)3393 / 裁判年月日: 昭和26年4月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】旧警察法上の政治活動の禁止に関し、本人の主観的な政治活動の意思の有無にかかわらず、現実の政治に影響を与えるような行動は政治活動に該当すると判断した。 第1 事案の概要:被告人が特定の行為(具体的な行為内容は判決文からは不明)を行い、これが当時の警察法等により禁止されていた「政治活動」に該当するかが…
事件番号: 昭和23(れ)1455 / 裁判年月日: 昭和23年12月23日 / 結論: 棄却
一 昭和二二年勅令第一號(公職に關する就職禁止退官退職等に關する勅令)第一六條第一項第一號に「調査表の重要な事項について……事實をかくした記載をした者」とあるのは、調査表に記載すべき重要な事項について、實在する事實を、その實在することを確認しながら、記載しなかつたものという意味である。この認識の外に特定の事實を他人に知…
事件番号: 昭和24新(れ)22 / 裁判年月日: 昭和25年9月27日 / 結論: 棄却
元來一時不再理の原則は、何人も同じ犯行について、二度以上罪の有無に關する裁判を受ける危險に曝さるべきものではないという根本思想に基くことは言うをまたぬ。そして、その危險とは、同一の事件においては、訴訟手續の開始から終末に至るまでの一つの繼續的状態と見るを相當とする。されば、一審の手續も控訴審の手續もまた、上告審のそれも…