一 裁判所の審判が終始同一裁判官によつてなされることは訴訟上望ましいことであるけれども、裁判官の病氣、退官、轉任等己むをえない事情のため、その更迭がある場合にも、裁判所に不能を強いることはできない。しかし刑事訴訟法はかかる場合でも猶且公判中心主義、直接主義を堅持する建前から公判手續の更新を命じているのである。然るに論旨は原審の公判手續の更新が形式的であつて、形式的に公判手續を更新した裁判官が原判決に關與したため執行猶豫の言渡がなかつたのは公判中心主義、眞實發見主義に反するというのである。しかし右に説示したように、原審はかかる刑事訴訟法の原則適用の結果として公判手續の更新をしたのであつて、しかも辯護人において、右更新の審理に立會い、その審理について、何等異議を申立てた形跡もないのである。されば更新が適式に行はれた以上畢竟形式的であつたに止り實質的に行はれていなかつたと認めることはできない。 二 附加刑の一つである沒収は本刑に随伴するものであり又刑は共同被告人であつても各別に科すべきものであるから、犯罪供用物件が共犯者の一人に屬する以上はその者に對する判決が確定したと否とを問はず他の共犯者に對しても沒収の言渡をなすべきものである。そしてそれが同一事件の共同被告人に對して各別に、又は別件として分離された共同被告人に對して各別に判決が言渡された場合であるとによつてその理を異にすべきではない。
一 公判手續更新が形式的であるため執行猶豫の言渡がなかつたという主張と公判中心主義 二 犯罪供用物件が共犯者の一人に屬する場合における他の共犯者に對する沒収の言渡
舊刑訴法354條,舊刑訴法358條,刑法19條2號,刑法60條
判旨
裁判官の更迭による公判手続の更新が適式に行われた以上、それが形式的であっても直接主義・公判中心主義に反しない。また、共犯者の一人に属する犯罪供用物件は、他の共犯者に対する判決においても各別に没収を言い渡すことができる。
問題の所在(論点)
1. 裁判官の更迭に伴う公判手続の更新が「形式的」である場合に、直接主義・公判中心主義に反するか。 2. 同一の犯罪供用物件について、共犯者ごとの判決で各別に没収を言い渡すことができるか。
規範
1. 裁判官の更迭に伴う公判手続の更新(刑事訴訟法315条参照)は、直接主義・公判中心主義を堅持するための制度であり、適式に更新手続が執られた以上、実質的審理の程度を問わず有効である。 2. 附加刑である没収は本刑に随伴するものであり、犯罪供用物件が共犯者の一人に属する限り、他の共犯者に対する各別の判決において重ねて没収を言い渡すことが可能である。
重要事実
被告人らは共謀して強盗を犯したとして起訴された。原審(控訴審)において裁判官の更迭があったため公判手続の更新が行われたが、被告人側はこれが「形式的」であり実質を伴わないと主張した。また、原審が第一審の公判調書を証拠として事実認定に用いたこと、および同一の押収物(麻縄)について共同被告人らの各判決でそれぞれ没収を言い渡したことの適法性が争われた。
あてはめ
1. 原審は裁判官の更迭を受けて刑事訴訟法の規定に従い公判手続を更新しており、弁護人もこれに立ち会い異議を述べていない。適式に更新がなされた以上、それが形式的であるとしても実質を欠くと認めることはできず、適法である。 2. 原審が第一審公判調書を証拠とした点についても、公判廷において適式に証拠調べを行っている以上、直接主義・公判中心主義に合致する。どの証拠を採用するかは事実審の専権事項である。 3. 没収について、物件が共犯者の一人に属する以上、共犯者各人に対する科刑においてそれぞれ没収を言い渡すべきであり、別個の判決で二重に言い渡されたとしても違法ではない。
結論
本件各上告を棄却する。公判手続の更新は適法であり、また、同一物件を共犯者各人の判決で没収することも正当である。
実務上の射程
公判手続の更新に関する形式的適法性を認めた基本的判例。また、没収の個別的宣告に関する実務慣行を肯定する。司法試験においては、公判手続の更新が形骸化しているとの批判に対する反論、あるいは没収の宣告漏れを防ぐための論拠として活用できる。
事件番号: 昭和24(れ)1040 / 裁判年月日: 昭和24年8月18日 / 結論: 棄却
從來審理に關與しなかつた裁判官が、判決の言渡に關與しても何ら違法ではない。