一 副檢事はその屬する區檢察廰の對應する簡易裁判所(第二條)の管轄區域内においてその裁判所の管轄に屬する事項について公訴權を行使することとなるのである。 二 檢事正は地方檢察廰の檢察官の事務を随時その廰の所在地の區檢察廰の檢察官(副檢事たると檢事たるの區別を問うことなく)に取扱はせることができるものと解すべきを相當とし、何等疑義を挾む餘地はないと言うべきである。 三 副檢事は、區檢察廰の檢察官の職のみに補せられるのであるが(第一六條第二項)第一二條の場合においては例外として地方檢察廰の檢察官の事務を取扱うことを得るものと言はなければならない、それ故本件において區檢察廰川本副檢事が横濱地方檢察廰横須賀支部檢事事務取扱檢察官副檢事としてなした本件公訴提起は有効であると論結すべきものである。 四 判事はすべて例外なく裁判官であり裁判官の中の一類別であることは明らかである(裁判所法第五條第二項)裁判官でない判事はどこにもいない。それ故「判事」という表示を具へた原判決は、裁判官たることを十分に表示しているものであつて論旨は當を得たものと言うことはできない。 五 しかし、強盜罪は、犯人が他人所持の財物を強取する行爲であるからその強取された財物が他人の所持にかかる他人の所有物であることを判示していれば足るのである。「A等所有の」とある原判決の判示はこの點につき何等缺けるところはない。
一 副檢事の公訴提起の權限 二 副檢事に地方檢察廰の檢察官の事務を取扱はせることの可否 三 副檢事が地方檢察廰の檢察官事務取扱としてなした公訴提起の効力 四 裁判所法第五條第二項のいわゆる「判事」と「裁判官」 五 強盜の被害物件が他人の所持にかかることの判示の程度
檢察廰法4條,檢察廰法2條,檢察廰法12條,檢察廰法16條2項,裁判所法5條2項,刑法236條
判旨
検察官同一体の原則に基づき、検事正は検察庁法12条を根拠に、副検事に対して地方検察庁の検察官の事務を取り扱わせることができ、その公訴提起は有効である。また、強盗罪の判示においては、強取された財物が他人の所持に係る他人の所有物であることを示せば足り、詳細な所有関係の特定までは要しない。
問題の所在(論点)
1. 副検事が地方検察庁の検察官として公訴を提起することの適法性(検察庁法12条の解釈)。 2. 強盗罪の有罪判決において、被害物件の所有主が厳密に特定されている必要があるか。
規範
1. 検察官は検察官同一体の原則の下、検事総長、検事長または検事正の指揮監督を受け、その事務を自ら取り扱い、または他の検察官に取り扱わせることができる(検察庁法12条)。副検事であっても検察官の一類別(同法3条)であり、例外として地方検察庁の検察官の事務を取り扱うことが許される。 2. 強盗罪の成立には、強取された財物が他人の所持に係る他人の所有物であることが判示されていれば足り、その厳密な帰属が不明であっても犯罪の成否に影響しない。
事件番号: 昭和24(れ)1324 / 裁判年月日: 昭和24年11月10日 / 結論: 棄却
一 數名の強盜犯人が、事前に明示的に強盜することを謀議していた場合ばかりでなく、豫め暗默のうちに強盜をすることを互ひに了解していた場合であつても、又できることなら窃盜だけに止め、止むを得ないときは強盜をする旨打合せていた場合であつてもなお共謀の上強盜をなしたものといい得るのである。 二 舊刑訴法の下では檢察官が公訴を提…
重要事実
区検察庁所属の副検事が、検事正の命により横浜地方検察庁横須賀支部の検事事務取扱検察官として公訴を提起した。これに対し被告人側は、副検事は区検察庁の職のみに補せられるべき(検察庁法16条2項)であり、地方検察庁の事務を行う公訴提起は無効であると主張した。また、強盗被害物件の所有関係が曖昧であること等を理由に、事実誤認を主張して上告した。
あてはめ
1. 検察庁法12条は検察官同一体の原則に基づき、事案に応じた柔軟な運用を認めた規定である。副検事も検察官である以上、同条により検事正の指揮の下で地方検察庁の事務を取り扱うことは可能であり、検察庁法16条2項の原則に対する例外として許容される。 2. 本件強盗の判示において「A等所有の」と記載されており、他人の占有・所有する財物を強取した事実は十分に示されている。被害点数についても、被害顛末書の記載内容から合理的に認定されており、事実誤認の違法はない。
結論
1. 副検事による地方検察庁の事務取扱としての公訴提起は有効である。 2. 強盗罪の判示は、他人の所持・所有物であることが示されていれば足り、本件判示に欠けるところはない。上告棄却。
実務上の射程
検察官の職務権限の互換性と「検察官同一体の原則」を具体化した判例である。司法試験においては、公訴提起の有効性や検察官の代理・事務取扱の根拠として検察庁法12条を引く際に参照される。また、強盗罪等の財産犯における被害者の特定程度についても実務上の指針となる。
事件番号: 昭和25(れ)1847 / 裁判年月日: 昭和26年4月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】公判請求書(起訴状)において、犯罪事実を直接記載せず、一件記録中の「司法警察官意見書」に記載された犯罪事実を引用する方法による公訴提起は適法である。 第1 事案の概要:検察官が公訴を提起する際、公判請求書(現在の起訴状に相当)の犯罪事実欄に具体的な事実を自ら記載せず、「司法警察官意見書記載の犯罪事…
事件番号: 昭和28(あ)3824 / 裁判年月日: 昭和28年12月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】住居侵入罪が強盗罪の手段となる関係にある場合、起訴状において訴因や罰条として明示され、被告人に送達されている限り、適法に訴訟の対象となり得る。 第1 事案の概要:被告人は、強盗等の罪で起訴された。被告人側は、住居侵入の事実が昭和28年1月24日付の起訴状には訴因罰条として含まれていたものの、同年3…
事件番号: 昭和24(れ)2214 / 裁判年月日: 昭和25年2月17日 / 結論: 棄却
一 所論公訴棄却の判決は、その公訴にかゝる強盜の事實については既にそれと連續犯の關係にある窃盜の事實について別に公訴が提起せられてあつたがために、一個の連續犯に對して重ねて公訴を提起することは、許されないとの理由によつてその公訴自体を不適法として棄却したものであつて、その公訴にかゝる強盜の事實について何ら、實質上の審判…