一 証人が特定の人から伝聞した事実の内容を供述した証言は、旧刑訴法において、証拠能力を否定されない。 二 被告人は昭和二三年七月二〇日逮捕され、同月二二日勾留状の執行を受け、同月三一日公判請求があり、同年一〇月二六日第一審第三回公判で、従來否認を続けて來た供述を飜えし本件犯罪事實を自白するに至つたもので、逮捕後右自白までの日數が一三〇日であることは記録上明かである。しかし本件事案は原判示の如く被告人がA外數名と共謀して敢行した集團強盜事件であり、その事案の複数性並びに取調の状況等に鑑みるときは被告人の右程度の拘禁は現今における刑事々件の幅輳している條件下においては己むを得ないのであつてこれをもつて不當に長い勾留とは言い得ないのである。従つて被告人の前記自白は刑訴應急措置法第一〇條第二項後段にいわゆる不當に長く抑留若しくは拘禁された後の自白にあたらないものである。
一 証人が特定の人から伝聞した事実を内容とする証言の証拠能力 二 拘禁後一三〇日目の自白と不當に長い拘禁後の自白
旧刑訴法337条,憲法38條2項,刑訴應急措置法10條2項
判旨
不当に長い拘禁後の自白の証拠能力に関し、事案の複雑性や取調の状況、当時の事件輻輳状況に鑑みてやむを得ないと認められる期間であれば、憲法上の不当な拘禁に当たらない。また、旧法下において伝聞証言であっても、特定の者から聞き及んだ事実は直ちに証拠能力を否定されない。
問題の所在(論点)
逮捕から130日が経過した後の自白が、憲法38条2項及び刑訴法上の「不当に長く抑留又は拘禁された後の自白」として証拠能力を否定されるか。また、伝聞供述を録取した調書の証拠能力が認められるか。
規範
「不当に長い拘禁」後の自白(旧刑訴法応急措置法10条2項後段、現行刑訴法319条1項)に該当するか否かは、単に日数の長短のみで決するのではなく、事案の複雑性、取調の状況、及び当時の裁判所・捜査機関における事件の輻輳状況等の諸般の事情を総合考慮し、その拘禁が「やむを得ない」ものといえるかによって判断する。
重要事実
被告人は、数名と共謀して集団強盗(強盗傷人)を敢行したとして、昭和23年7月20日に逮捕、同月22日に勾留状の執行を受けた。その後、同年10月26日の第一審第3回公判において自白するまで、逮捕から計130日間にわたって拘禁されていた。被告人側は、この自白は不当に長い拘禁後のものであるとして証拠能力を争った。また、伝聞事実を含む証人Bの供述調書の証拠能力も問題となった。
あてはめ
本件は被告人が数名と共謀した集団強盗事件であり、事案が複雑である。また、当時の刑事事件が輻輳している条件下においては、取調等の必要性に照らし、自白まで130日を要した拘禁の程度は「やむを得ない」ものと認められる。したがって、本件の拘禁は「不当に長い」ものとはいえず、自白の証拠能力は否定されない。さらに、特定の者から聞き及んだ事実を内容とする証言は、単なる風説とは異なり、旧法下において直ちに証拠能力が否定されるものではない。
結論
本件の自白は不当に長い拘禁後の自白には当たらず、証拠能力が認められる。また、自白以外の補強証拠も存在するため、有罪判決は正当である。
実務上の射程
自白の任意性・証拠能力が争われる場面において、勾留期間の正当性を判断する際の考慮要素(事件の複雑性や客観的な捜査環境)を示す判例として活用できる。ただし、現行法下では憲法34条・38条及び刑訴法の規定に照らし、より厳格な期間管理が求められる点に注意が必要である。
事件番号: 昭和23(れ)497 / 裁判年月日: 昭和23年9月18日 / 結論: 棄却
一 かりに原判決が證據とした原審公判における被告人の自白前の拘禁が不當に長いものであるとしても、被告人は本件犯行については、拘禁後四〇餘日を經た豫審の取調べにおいて、すでに自白をしているのであり、更にその後七〇餘日を經た第一審公判においても同樣自白をしているのであつて、この程度の期間の拘禁は、前述の事情等からみて不當に…
事件番号: 昭和24(れ)349 / 裁判年月日: 昭和28年6月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法38条2項にいう「不当に長く拘禁された後の自白」とは、拘禁と自白との間に因果関係があることを要し、因果関係がないことが明らかな自白は含まれない。また、病状があっても審理に耐え得ると認められる限り、公判手続を停止しないことは適法である。 第1 事案の概要:被告人は強盗容疑で逮捕・勾留され、約11…