原判決は主文において押收にかかる漁船A丸(證第一號)の没收を言渡しその理由として該漁船は本件犯罪行爲に供した船舶であつて被告人が本件犯行當時船長としてこれを占有していたものと認めるから昭和二一年勅令第二二七號第九條第一項によつてこれを没收する旨を證示している。即ち、原判決は本件犯罪時における該漁船の占有關係を基準として同漁船を没收する理由としている。然し前記勅令第九條第一項は「第一條の犯罪に係る物品又は同條の犯罪行爲に供した船舶で犯人の所有し又は占有しているものはこれを没收する」と規定し次いで第二項には「犯人以外の者が犯罪の後前項の物を取得した場合にその取得の當時善意であつたと認められないときはその物を没收する」と規定していることに鑑みれば寧ろ没收の裁判言渡當時を基準として本件漁船に對する占有關係を判斷すべきものと解せられる。然らば原判決が犯罪事において前記漁船が被告人の占有に屬していたことを説示するのみでは果して裁判事においても依然被告人がこれを占有していたものか或は本件犯罪後該漁船を善意で取得した者があるか否か原判決自体からこれを知ることが出来ない。従つて原判決には叙上の點についていまだその審理を盡していない違法があると言わなければならない。
昭和二一年勅令第二七七號第九條第一項による没收の言渡と同項にいわゆる「犯人の占有しているもの」であるか否かを決すべき基準
昭和21年勅令277號9條1項
判旨
没収の対象となる物件が被告人の所有又は占有に属するか否かは、犯罪時ではなく没収の裁判言渡当時を基準として判断すべきである。
問題の所在(論点)
没収の要件である「被告人による所有又は占有」の存否を判断すべき基準時は、犯罪時か、それとも裁判時(判決時)か。
規範
没収の要件となる「犯人の所有し又は占有しているもの」との判断は、没収の裁判言渡当時を基準とすべきである。また、犯罪後に第三者が取得した物件については、取得当時の善意の有無によって没収の可否を判断する。
事件番号: 昭和23(れ)1846 / 裁判年月日: 昭和24年5月21日 / 結論: 破棄差戻
被告人等は本件物件を取得した相手方乘組員が商船の單なる乘組員であると信じていたもので、その乘組員が所論政令第一條にいわゆる連合國占領軍に附屬若しくは随伴する者に該當することを認識しなかつたことは記録に照し明かであると主張し從つて被告人等はその點に於て違法性の認識がなかつたに拘らず右政令違反として有罪と判定したのは違法で…
重要事実
被告人が、犯罪行為に供された漁船(A丸)を犯行当時に船長として占有していた事実に基づき、原審は昭和21年勅令第227号9条1項を適用して同船舶の没収を言い渡した。しかし、原審は裁判時における占有関係や、犯罪後に善意の第三者が取得したか否かについては審理を行わなかった。
あてはめ
昭和21年勅令第227号9条1項及び2項の規定に照らせば、没収の裁判言渡当時を基準として占有関係を判断すべきである。本件において原審は、犯罪時に被告人が占有していたことのみを理由に没収を認めており、裁判時においても依然として被告人が占有していたのか、あるいは犯罪後に善意の第三者が取得したのかという重要事実を確定していない。したがって、没収の要件具備を判断するための審理が尽くされていないといえる。
結論
没収の判断基準時は裁判時である。原判決は犯罪時のみを基準としており審理不尽の違法があるため、破棄・差戻しを免れない。
実務上の射程
刑法19条等の没収一般においても、没収が刑罰(付加刑)である以上、その対象物件が没収可能な状態にあるかは裁判時を基準とするという原則を示すもの。答案上は、事後的に所有権が移転した場合や占有が離脱した場合の没収の可否を論ずる際の論拠となる。
事件番号: 昭和25(れ)1912 / 裁判年月日: 昭和26年6月29日 / 結論: 破棄差戻
【結論(判旨の要点)】被告人が運搬・積載に関与した既遂物品と、実際に押収された未遂物品とを混同して事実認定を行い、当該押収物品を既遂罪の証拠として没収することは、判決に影響を及ぼすべき重大な事実誤認である。 第1 事案の概要:被告人AおよびBは、C丸を用いた密輸出に関与したとして起訴された。起訴状には密輸出の既遂事実と…
事件番号: 昭和26(れ)1282 / 裁判年月日: 昭和26年9月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人の上告趣旨が単なる量刑不当の主張に帰する場合、刑事訴訟法応急措置法13条2項に基づき、適法な上告理由には当たらない。 第1 事案の概要:被告人が原判決に対して上告を提起したが、その上告趣旨の内容は、結局のところ原判決の量刑が重すぎるという量刑不当の主張に帰するものであった。その他の適法な上告…
事件番号: 昭和24(れ)1267 / 裁判年月日: 昭和24年12月24日 / 結論: 棄却
一 論旨は刑訴應急措置法第一二條第一項は憲法第三七條第二項に違反する規定であつて、同規定を適用し採證した原判決は違憲のものであるというにある。しかし刑訴應急措置法第一二條第一項が憲法に違反したものでないことは當裁判所の判例の示すところである(昭和二三年(れ)第八三三號同二四年五月一八日大法廷判決)従て同條に則り採證した…
事件番号: 昭和24(れ)2776 / 裁判年月日: 昭和28年4月30日 / 結論: 棄却
仮りに、古い被告人の私物であつて、朝鮮向の貨物でないから沒収をしたのが違法であるとしても、右は判示多数の沒収品中の一点に過ぎないから、原判決を破棄しなければ著しく正義に反するものとは認め難い。