原判決が、第一審第一回公判調書を事實認定の證據として採用していること、及び第一審公判調書は二通あつて、一は公判開廷の日が昭和二三年一〇月三〇日と記載されているが、他は單に昭和二三年とあるのみで月日の記載のないことは、辯護人主張のとおりである。しかしながら(一)「一〇月三〇日の調書」には、第二回公判調書と明記されていること(二)記録をみれば「月日の記載のない調書」はその前に編綴されていること(三)右調書の末項に「裁判官は結審し判決言渡期日を來る一〇月三〇日午前九時と指定告知し訴訟關係人に出頭を命じたり」との記載があること(四)原判決引用の證據内容と右調書の記載内容とか符合することからみて、原判決の引用した第一審第一回公判調書というのは、右「月日の記載のない調書」をさすものであることは疑のないところである。しかして、右調書には公判開廷の月日の記載のないことは前述のとおりであるが、記録を調べてみると、記録表紙の開廷日欄には一〇月二八日及び一〇月三〇日宣と記載されてあつて、右兩日の外には第一審公判期日は開かれていないこと、第一審各辯護人の一〇月二八日午前九時の公判期日請書が記録に綴込まれてあり、しかも問題の調書には右各辯護人が出頭した旨の記載があることから推して考えれば、該調書に遺脱している公判期日は、昭和二三年一〇月二八日であることを明瞭に認めることができるのである。公判開廷の年月日を公判調書に記載することは、舊刑訴法第六〇條の要求するところではあるけれども、この記載を欠く場合に常に公判調書が當然無効になるものと解する必要はない。公判開廷の月日が公判調書自体の記載では判明しなくとも、本件のごとく記録の他の資料から事實上公判の開廷された月日が明瞭に認識し得る場合は、如上の欠缺は公判調書の無効を來するものでなく、同調書の記載内容は十分に證據力を有するものと判断するのが相當である。従つて右公判調書を證據とした原判決に所論のような違法あるものとすることはできない。
開廷月日の記載のない公判調書の効力
舊刑訴法60條,舊刑訴法64條,舊刑訴法337條
判旨
公判調書に開廷年月日の記載を欠く場合であっても、記録上の他の資料から開廷日が明瞭に認識できるときは、当該調書は当然に無効とはならず証拠能力を有する。
問題の所在(論点)
公判調書において法律上要求される公判開廷年月日の記載を欠く場合、当該調書は無効となり証拠能力を失うか。法定の記載事項を欠く調書の有効性が問題となる。
規範
公判調書に公判開廷の年月日の記載(刑事訴訟法48条1項1号参照)を欠く場合であっても、常に当該調書が当然無効になるものではない。公判調書自体の記載では月日が判明しなくとも、記録の他の資料から事実上公判が開廷された月日が明瞭に認識し得る場合には、右の欠缺は公判調書の無効を来すものではなく、証拠能力を認めることができる。
重要事実
被告人の第一審第一回公判調書には「昭和23年」とのみあり、月日の記載が欠落していた。一方、記録上の「第二回公判調書」には昭和23年10月30日の日付が明記され、その末尾には同日を判決言渡期日と指定する旨の記載があった。また、記録表紙の開廷日欄には10月28日及び10月30日の記載があり、弁護人の10月28日付公判期日請書も編綴されていた。原判決は、この月日不詳の調書を第一回公判(10月28日)のものと判断し、証拠として採用した。
あてはめ
本件において、問題の調書は第二回公判調書の前に編綴されており、第二回公判が10月30日であることや記録表紙の記載、弁護人の期日請書等の「記録の他の資料」を総合すれば、当該調書の公判期日が昭和23年10月28日であることは客観的に明瞭である。このように開廷日が外部から補完的に特定可能である以上、日付の記載漏れという形式的不備は調書の実質的効力に影響を及ぼさない。したがって、当該調書の記載内容は証拠として許容される。
結論
公判調書に年月日の記載を欠く場合であっても、他の記録資料から開廷日が特定できるときは、当該調書を証拠として採用した判断に違法はない。
実務上の射程
刑事手続の法的安定性と正確性の要請から、公判調書の形式的不備が直ちに無効を招くかという文脈で活用できる。特に「記録の他の資料から明瞭に認識し得る」という基準は、他の形式的記載事項(署名押印等)の欠欠に関する類推適用の可否を検討する際の判断枠組みとなる。
事件番号: 昭和24(れ)1259 / 裁判年月日: 昭和24年12月24日 / 結論: 棄却
一 昭和二四年一月二五日の原審第二回公判調書末尾の記載を見ると、裁判長は次囘公判期日を來る二月二四日午前一〇時と指定告知し公訴關係人に出頭を命じ閉廷した旨の記載のあることは所論のとおりである。よつて原審第三回公判調書を關すると、その調書冒頭の日附である「昭和二四年二月二六日」との記載は「昭和二四年二月二四日」の誤記であ…