原判決は、所論昭和二二年一一月二八日頃收受した本件賄賂は既に被告人において費消した旨判示しており、そして、同年一二月中被告人がこれを飲食費等に消費した事實は記録上明白である。従つて被告人はその賄賂を費消すると共にその利益を享受し終り最早これを没收することができなくなつたものといわなければならない。されば、被告人がその後約一箇年を經た同二三年一二月二〇日頃同額の金圓を贈賄者に返還したとしても、その返還は賄賂そのものの返還ではないから收賄者において既に享受した利益を國庫から追徴される責を免れることは許されないものといわねばならぬ。
費消した賄賂金額を返還した場合における追徴の可否
刑法197條ノ4
判旨
収賄者が収受した賄賂を費消した後に同額の金員を贈賄者に返還したとしても、賄賂そのものの返還とはいえないため、国庫による追徴の責を免れることはできない。
問題の所在(論点)
収賄罪において、収受した賄賂を一旦費消した後に、同額の金員を贈賄者に返還した場合、刑法197条の5(旧197条ノ2)に基づく「没収することができないとき」の追徴を免れることができるか。
規範
賄賂が費消され、収賄者がその利益を享受し終えて没収不能となった場合には、たとえ後に同額の金員を返還したとしても、それは賄賂自体の返還とは認められない。したがって、既に享受した利益については、刑法197条の5に基づき、国庫による追徴を免れることはできない。
重要事実
被告人は、昭和22年11月頃に収受した賄賂を、同年12月中に飲食費等として消費した。その後、約1年が経過した昭和23年12月頃、被告人は贈賄者に対し、賄賂と同額の金員を返還した。
あてはめ
被告人は、収受した賄賂を飲食費等に充てることで、その利益を享受し終えている。この時点で賄賂そのものは現存せず、没収不能の状態に陥っているといえる。その約1年後に同額の金員を返還したとしても、それは代替的な金銭の支払いに過ぎず、賄賂そのものの返還には当たらない。したがって、収賄者が既に享受した不法な利益を国庫に帰属させるべき追徴の必要性は失われない。
結論
被告人は追徴の責を免れず、原判決の追徴維持は妥当であるため、上告を棄却する。
実務上の射程
賄賂が金銭である場合の費消後の返還が、追徴の義務に影響しないことを明確にした。答案上は、没収・追徴の趣旨(不法な利益を保持させないこと)から、賄賂の現物性が失われた後の事情は追徴を妨げない根拠として活用できる。
事件番号: 昭和26(あ)3026 / 裁判年月日: 昭和27年12月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】収賄者が賄賂を享受した後に、贈賄者に同額の金員を返還したとしても、賄賂そのものを返還したのではない限り、既に享受した利益について追徴される責任を免れることはできない。 第1 事案の概要:被告人A、B、Cは、それぞれ贈賄者から現金を受領して収賄した。Aは受領した現金の約2割を費消し、残額を妻が他の預…