一 暴力行爲等處罰ニ關スル法律第一條にいわゆる「多衆ノ威力ヲ示シ」というのは、同條所定の罪の實行行爲擔當者が、多衆を背景にして其の威力を相手方に示すことを必要とする。 二 銃砲等不法所持罪の成立に必要な犯意は、被告人が日本人であることを認識し乍ら、これを自己の實力支配内に置くを以つて足り、その所持の動機の如何は犯意の存否に影響はない。
一 暴力行爲等處罰ニ關スル法律第一條にいわゆる「多衆ノ威力ヲ示シ」の意義 二 銃砲等不法所持罪の犯意
暴力行爲等處罰ニ關スル法律1條,刑法208條,銃砲等所持禁止令1條,銃砲等所持禁止令2條
判旨
共謀共同正犯の成立には、実行行為者との間で特定の犯罪を遂行する合意があり、かつ、相手方の犯意を強めるなどの寄与があれば足り、既に犯意を有する者に対する言語上の助勢であっても従犯にとどまらず正犯となり得る。
問題の所在(論点)
特定の犯罪(襲撃・暴行)を実行する意思を既に有している者に対し、費用負担の約束などの言語による助勢を行ったにすぎない場合であっても、刑法60条の共同正犯が成立するか。
規範
共同正犯(刑法60条)が成立するためには、二人以上の者が特定の犯罪を共同して遂行する意思(共謀)を有し、これに基づいて実行行為がなされることを要する。既に特定の犯罪の犯意を抱いている者に対しても、その意図を肯定し、資金提供の約束などの言語上の助勢を通じて犯行を確実にするような関与を行った場合には、単なる従犯ではなく共同正犯として処断し得る。
重要事実
暴力団関係者である被告人Aは、対立するD組との抗争が切迫していると考え、配下のRら十数名と共にC方を襲撃することを決意した。AはRらに対し、不良の征伐を指示するとともに、抗争の結果生じる費用や弁護士費用について自身が全面的に助ける旨を伝えた。Rらは既に襲撃の意図を有していたが、Aのこれらの言動を経て実際にC方を襲撃し、乱闘・暴行に及んだ。弁護人は、Aの行為は既に犯意を持つ者への言語上の助勢にすぎず、従犯にすぎないと主張した。
事件番号: 昭和25(れ)1159 / 裁判年月日: 昭和25年10月3日 / 結論: 棄却
所論中には、本件日本刀の所持の点につき被告人がさきに連合国占領軍の軍事裁判所において処罰ずみの趣旨の陳述があるが、仮りにそのような事実があつたとしても軍事裁判所は我が国の裁判ではないので本件に既判力を及ぼすものではないので問題とはならない。
あてはめ
被告人Aは、配下のRらがD組との争闘を避けられない状況にあることを熟知しながら、「費用は面倒を見る」といった趣旨の発言を行い、襲撃を承認・奨励している。これは、Rらの犯行計画を決定的なものにし、その実行を容易にさせる重要な心理的寄与であるといえる。仮に実行者RらがAの話を聞く前からある程度の襲撃意図を有していたとしても、Aの言動が共謀の一環として機能し、共同の意思に基づいて犯行が遂行されたと評価できる以上、正犯としての責任を免れない。
結論
既に犯意を有する者に対する言語上の助勢であっても、共同実行の意思に基づく関与であると認められる以上、共同正犯が成立する。したがって、被告人Aを共同正犯とした原判決に違法はない。
実務上の射程
共謀共同正犯における心理的因果関係の判断に用いる。特に「親分・子分」のような指揮命令系統がある場合、背後者の言語的助勢が実行者の犯意を強固にする効果が大きいため、正犯性を認める有力な根拠となる。答案上は、単なる従犯(幇助)との区別において、関与者の立場や発言内容が実行行為に与えた影響力を評価する際に引用すべき判例である。
事件番号: 昭和26(あ)757 / 裁判年月日: 昭和28年1月16日 / 結論: 棄却
所論は第一審判が判示第二乃至第六の事実認定の証拠として共犯者三名の公判廷における供述を採用したことを認容した原審の判断は刑訴三一九条二項憲法三八条三項に違反するというのであるが、記録によると一審の採用した右共犯者等の供述は被告人としてなされたものではなく、宣誓の上証人として供述したものであるから右刑訴法の規定に反するも…
事件番号: 昭和26(あ)952 / 裁判年月日: 昭和28年1月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人の自白がある場合、相被告人の供述を当該被告人の自白に対する補強証拠とすることができる。これは憲法38条3項の趣旨に反するものではない。 第1 事案の概要:被告人の自白が存在する刑事事件において、原判決が相被告人の供述を被告人の自白に対する補強証拠として採用し、有罪判決を下した。これに対し弁護…
事件番号: 昭和24(れ)1614 / 裁判年月日: 昭和26年8月28日 / 結論: 棄却
盗難被害者によつてその被害顛末を報告するため作成せられ捜査官憲に提出された記録に編綴された犯罪届書は、旧刑訴第三四〇条にいわゆる証拠書類である。
事件番号: 昭和24(れ)1759 / 裁判年月日: 昭和25年1月10日 / 結論: 棄却
論旨は、審理の冒頭における概括的な犯罪事実の承認によつて、犯罪事實の内容に亘り全部を認めたものとすることはできないと主張するなるほど、被告人が概括的の問答では犯罪事實を認めても、個々の點についてはこれに反する供述をしたような場合には、冒頭の答えだけで細部に亘る悉くの事實を認めたものとは云い難いこともあらう。しかしその何…