一 具體的事件の審理にあたつて、少年に對する被告事件と他の被告事件とを分離して審理しても審理の妨げとなるか否かの判斷は事實承審官の良識に信任してその裁量に委したものと解するのが相當である。 二 舊刑訴法第一三五條の規定は、裁判官に對する執務の方法態度についての訓示的性質のものにすぎないと解するのが相當である。
一 少年に對する被告事件と他の被告事件と分離して審理する場合と自由裁量 二 舊刑訴法第一三五條と訓示的規定
少年法49條2項,舊刑訴法135條
判旨
少年法9条および50条に基づく心身鑑別等の調査規定、ならびに同法49条2項の併合審理制限規定は、いずれも裁判官に対する訓示的規定であり、具体的な調査範囲や審理の分離・併合の判断は事実審裁判官の合理的な裁量に委ねられる。
問題の所在(論点)
1. 少年法9条(50条)に基づく少年の心身鑑別等の調査を、専門家を関与させずに行った審理は違法か。 2. 少年法49条2項に反して少年被告人と他の共犯者を併合審理したことは違法か。
規範
1. 少年法9条(50条により準用)の規定は、少年の心身の状況等の調査方針を示したものであり、裁判官に対する事件処理上の訓示的規定である。調査の範囲・方法は、裁判官の良識と妥当な裁量に一任されており、専門家による調査を実施しないことが直ちに違法となるわけではない。 2. 少年法49条2項の併合審理制限は、他の被告人からの悪影響等を防止する趣旨であるが、「審理に妨げない限り」という制限がある。少年被告事件を他の被告事件と分離すべきか否かの判断も、事実審裁判官の合理的な裁量に委ねられる。
重要事実
被告人A(当時18歳未満)は、共犯者らと強盗およびその幇助の事実で起訴された。第一審および控訴審は、少年法に基づく専門家による心身鑑別等を実施せず、公判廷での直接尋問や記録調査(犯行直前の保護処分歴や家族状況等)によって被告人の状況を把握した。また、少年であるAの事件を、強盗幇助を否認する成人の共犯者らの事件と分離せず併合して審理した。これに対し弁護人は、専門的調査の欠如および併合審理が少年法に違反すると主張して上告した。
あてはめ
1. 原審は、直接尋問を通じてAの生い立ち、教育程度、生活状況、犯行の動機等を明らかにし、さらに犯行直前に保護処分を受けていた事実等の記録を調査している。これらの事情に照らせば、専門的知識を活用せずとも審理の満足を得られると判断した原審の裁量に不合理な点はなく、違法ではない。 2. 本件強盗の実行行為と幇助行為には密接かつ微妙な関係があり、共犯者らが幇助の犯意を否認している状況下では、分離審理を行うとかえって事案の真相把握や情状の明確化を妨げるおそれがある。したがって、併合審理を選択した原審の裁量は、経験則に反せず正当である。
結論
少年法9条・49条2項の規定に違反するとの主張は、裁判官の適法な裁量権の範囲内を非難するものに過ぎず、原審の審理に違法はない。上告棄却。
実務上の射程
少年の刑事手続における調査規定の性格を「訓示規定」と位置づけ、裁判官の広範な裁量を認めた判例である。答案上は、少年の保護的要請(少年法1条)と適正手続・審理の能率との調整局面で、裁判所の裁量権を肯定する根拠として活用できる。ただし、現代の運用では少年鑑別所の鑑別結果等は重視されるため、裁量の逸脱・濫用がないかの検討は必要となる。
事件番号: 昭和26(れ)148 / 裁判年月日: 昭和26年5月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】証拠の価値判断は原審の裁量に属する事柄であり、これを非難して事実誤認を主張することは、上告適法の理由とはならない。 第1 事案の概要:被告人が原審の判決に対し上告を提起した事案である。上告人は、原審が行った証拠の価値判断を不当であると非難し、それに基づく事実認定に誤りがあること(事実誤認)、および…