控訴審において、証拠調を終つた後に、検事が「原判決と同様に審判せられるを相当と思料する」と述べたときは、適法に、事実及び法律の適用について意見を陳述したものというべきである。
検事の事実及び法律の適用についての意見の陳べ方
旧刑訴法349条,旧刑訴法407条
判旨
強盗実行犯が強取行為を完了し目的物を完全に支配した後に単に運搬したに過ぎない場合は強盗幇助とならないが、依然として支配が完了していない段階での関与は強盗幇助を構成し得る。また、公判廷での否認のみをもって直ちに捜査段階の供述が強制によるものとは断定できない。
問題の所在(論点)
1. 強盗実行犯による目的物の支配が完了した後に加担した行為について、強盗幇助罪が成立するか。2. 公判廷での被告人による「取調べ時の迎合」の主張が、自白の任意性を否定する根拠として十分か。
規範
1. 強盗罪の成否について、実行行為者が目的物を奪取し完全に自己の支配に帰した後に介入したに過ぎない場合は、強盗罪の幇助(刑法62条1項)は成立しない。2. 自白の任意性(旧刑訴法349条、現行319条1項)について、被告人が公判廷において「取調官の言うがままに答えた」旨を供述し事実を否認したとしても、そのことのみから直ちに当該供述が強制によるものであると即断することはできず、諸般の事情から真実に合致するとの心証が得られるならば証拠能力は否定されない。
重要事実
被告人は強盗の実行犯Aと共謀または加担したとして強盗幇助の罪に問われた。一審判決後、被告人側は「Aが単独で強盗行為を完了し、強取した目的物が完全にAの支配に帰した後に、被告人は単にそれを運搬したに過ぎない」と主張して上告。また、警察官および検察官に対する自白調書について、被告人は公判廷において「警察でこうだろうと言われるのでハイハイと言っていただけで事実は違う」と述べ、強制による供述であるため証拠能力がないと主張した。
あてはめ
1. 認定された事実によれば、被告人の関与はAの支配が完全に確立する前に行われたものであり、単なる事後的な運搬にはとどまらない。したがって、強盗の実行行為を容易にしたものとして強盗幇助の成立が認められる。2. 公判廷において被告人が「警察の言う通りに答えた」と述べることは否認事件において往々にして見られる現象である。他に強制や勾留による精神錯乱を疑わせる資料が存在しない以上、裁判所が公判廷での供述よりも捜査段階の供述の方が真実に合致すると判断して証拠に採用することは適法である。
結論
被告人の行為は強盗幇助罪を構成し、また捜査段階の供述調書を証拠として事実を認定した原判決に違法はない。
実務上の射程
実務上、強盗の事後加担が「強盗」の幇助か、あるいは盗品等関与罪にとどまるかの境界線を示す。また、自白の任意性争いにおいて、単なる公判での迎合主張だけでは任意性の疑いを生じさせるに足りないとする、自由心証主義と任意性判断の枠組みを示した事例として活用できる。
事件番号: 昭和24(れ)1019 / 裁判年月日: 昭和24年7月22日 / 結論: 棄却
一 被害者が脅迫者を一人と認識したという供述は、被告人が他の一名と共に脅迫したという被告人の自白を補強する証拠とすることができるから、右両供述を証拠としても証拠にくいちがいがあるとはいえない。 二 しかし、被告人一人で脅迫したとしても、また共犯者と二人で脅迫したとしても本件における被告人の強盜共同正犯たる罪責に影響する…