被告人が他人と共謀して窃取した金員の額を、被告人の供述及び被害届書により認定した場合に、右被告人の供述及び被害届書と綜合して右窃盗事実認定の証拠とした共犯者の供述が窃取した金員の額について被告人の供述と多少相違していても、理由に齟齬があるとはいえない。
綜合して事実認定に供した数個の証拠中窃取金額について多少相違するものがあるときと理由齟齬の有無
旧刑訴法336条
判旨
被告人の自白と他の証拠を総合して犯罪事実を認定する際、自白の内容と補強証拠の内容に細部の不一致があっても、犯行自体の認定を妨げるものではない。執行猶予の当否は事実審の専権事項であり、諸般の事情を考慮した実刑判決は裁判官の適法な職権行使である。
問題の所在(論点)
自白の内容と補強証拠の内容に一部相違がある場合でも、それらを総合して犯罪事実を認定することができるか。また、執行猶予を付さず実刑を科すことは量刑不当として上告理由になるか。
規範
自白の補強証拠は、自白にかかる犯罪事実の客観的部分(罪となるべき事実)の真実性を担保するに足りるものであれば足り、自白の内容と補強証拠の記載との間に細部(金額等)の相違があったとしても、これらを総合して犯行自体を認定することは許容される。また、量刑(執行猶予の適否)は事実審の合理的な裁量に委ねられる。
重要事実
被告人Cらは窃盗の事実を自白したが、証拠とされた司法警察官の聴取書や犯罪表の記載内容と、被告人の自白内容との間で窃取した金額等に多少の相違があった。原判決は、被告人らの公判廷における自白と被害者Eの盗難届等の証拠を総合し、現金400円を窃取した事実を認定して実刑を言い渡したため、被告人側が採証法則違反および量刑不当を理由に上告した。
あてはめ
本件において、被告人らは公判廷で犯罪表に記載された被害品及び数量(現金400円)を読み聞かされ、相違ないと述べている。この公判自白と、被害者の盗難届という客観的証拠を総合すれば、犯罪事実の認定は十分に可能である。自白した金額と証拠上の金額に多少の齟齬があっても、犯行の存在自体を認定する上での妨げとはならない。また、実刑の選択は諸般の事情を考慮した裁判官の職権行使であり、裁量の範囲内といえる。
結論
原判決に採証法則違背や理由齟齬はなく、適法である。量刑不当の主張は適法な上告理由に当たらないため、上告を棄却する。
実務上の射程
自白の補強法則(刑訴法319条2項)に関する初期の判例であり、自白と補強証拠の「実質的な一致」の程度を緩やかに解する実務慣行を支持するものである。答案上は、補強証拠が自白の真実性を裏付ける程度のものであれば足り、細部の不一致は証拠評価の問題にすぎないことを論じる際に引用できる。また、執行猶予の裁量性についても言及されている。
事件番号: 昭和23(れ)1631 / 裁判年月日: 昭和24年3月29日 / 結論: 棄却
一 「法令ノ適用」というのは、これらすべての法規の適用をさしているのではなく「罪トナルベキ事實」に適用されて被告人の刑事責任を生ずるに直接關係ある法令の正條の摘用を意味しているのである、されば所論の昭和二二年法律第一二四號附則第四項のような手續的法規の適用は有罪判決に示す必要がないのである、また假りに右の規定が有罪判決…