暴行脅迫を用いて財物を奪取する犯意の下に、先ず他人の手にする財物を奪取し、次いで被害者に暴行を加えてその奪取を確保した場合は、強盜罪を構成する。
強盜罪の成立
刑法236条
判旨
暴行・脅迫を用いて財物を奪取する犯意の下、まず財物を奪取し、次いで奪取を確保するために被害者に暴行を加えた場合は、準強盗罪ではなく強盗罪(刑法236条1項)が成立する。
問題の所在(論点)
当初から強盗の犯意をもって、財物奪取の後に「奪取を確保する目的」で暴行を加えた場合、強盗罪(236条1項)と準強盗罪(238条)のいずれが成立するか。
規範
当初から暴行・脅迫を用いて財物を奪取する意思(強盗の犯意)がある場合において、手段としての暴行・脅迫と財物の奪取が先行・後行の前後を問わず一連の流れの中で行われたときは、事後強盗(238条)ではなく、通常の強盗罪(236条)を構成する。
重要事実
被告人は、当初から暴行・脅迫を用いて財物を奪取する犯意を有していた。被告人はその犯意に基づいてまず財物を奪取し、その直後に財物の奪取を確実なものにするために被害者に対して暴行を加えた。
あてはめ
本件では、被告人に当初から「暴行脅迫を用いて財物を奪取する犯意」が認められる。この犯意の下で、まず財物が奪取され、引き続いてその「奪取を確保」するために暴行が加えられている。これは、窃盗が事後的に居直る準強盗の態様ではなく、あらかじめ確定していた強盗の計画の一環として暴行が行われたものと評価できる。したがって、財物奪取と暴行の順序が逆であっても、全体として強盗罪の実行行為を構成するといえる。
結論
被告人には、準強盗罪ではなく強盗罪(刑法236条1項)が成立する。
実務上の射程
強盗の犯意が先行している場合に、暴行と奪取の前後関係が逆転していても強盗罪の成立を認める実務上の確立した法理である。答案上は、236条1項の「暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取」したといえるかという文脈で、犯意の一貫性と時間的・場所的近接性から一連の強盗行為と評価する際に用いる。
事件番号: 昭和40(あ)1868 / 裁判年月日: 昭和40年12月24日 / 結論: 棄却
強盗に着手した者が、被害者に暴行を加えて傷害の結果を生じさせたときは、財産上不法の利益をえることができなかつた場合においても、強盗傷人罪の既遂となるものと解するのが相当である。
事件番号: 昭和24(れ)1091 / 裁判年月日: 昭和24年7月16日 / 結論: 棄却
上告趣意一の強盜行爲(原判決判示第一の事實)は未遂であることは原判決もそのとおりに認定しているのであるが、その現場において傷人した以上は、たとい強盜行爲は未遂であつても、刑法第二四〇條前段の強盜傷人罪は成立するのである。