一 原判決の認定したところに從えば、被告人は、判事の米五俵が占有を離れた他人の物であることを認識しながら、不法にこれを領得しようと決意して、自宅の藏の内に匿い込んだというのであるから、これはまさしく刑法第二五四條の横領罪に該當する。假りに所論のように、被告人が右の米の盜品であることを認識していたとしても、不法領得の意思を以て之れを恰得した以上、同條所定の横領罪が成立するのであつて所論のように賍物收受罪が成立するのではない。 二 論旨は、浦和地方檢察廳熊谷支部に於て事務官A作成に係る聽取書に供述者の署名捺印がないことを非難しているが、原判決は右の聽取書を證據として採用していない。從つて假りにそれが違法であつたとしても、そのことは原判決に影響なきこと明白であるから、刑事訴訟法第四一一條によつて、これを上告の理由とすることはできない。 三 原審において受命判事がなした證人訊問手續が假りに違法であつたとしても、その證言を原審が證據として採用していない場合には、右違法は原判決に影響を及ぼさないこと明白であるから上告適法の理由とならない。
一 盜品たる占有離脱物の横領と賍物收受罪の成否 二 採證の用に供しない書類の作成上の違法と上告理由 三 その證言を證據に採らなかつた證人の訊問手續の違法と上告理由
刑法254條,刑法256條1項,刑訴法411條,刑訴應急措置法13條2項,憲法11條
判旨
占有を離れた他人の物を不法領得の意思をもって拾得した場合には、仮にそれが盗品であるとの認識があったとしても、占有離脱物横領罪が成立し、贓物収受罪は成立しない。
問題の所在(論点)
不法領得の意思をもって他人の占有を離れた物を拾得した場合において、その物が盗品であるとの認識があるとき、占有離脱物横領罪(254条)と贓物収受罪(256条1項)のいずれが成立するか。
規範
占有離脱物横領罪(刑法254条)は、占有を離れた他人の物を自己の支配下に置くことで成立する。一方で贓物収受罪(刑法256条1項)は、本犯から贓物の提供を受ける行為を処罰するものである。拾得行為は、その客体が盗品であっても、本犯との合意に基づく授受ではなく自らの占有開始を伴うものであるから、不法領得の意思がある限り、占有離脱物横領罪の成否を検討すべきである。
重要事実
被告人は、米5俵が占有を離れた他人の物であることを認識しながら、これを不法に領得しようと決意し、自宅の蔵に秘匿した。弁護人は、当該米が盗品であった場合には贓物収受罪が成立し、占有離脱物横領罪は成立しないと主張して上告した。
あてはめ
被告人は、米5俵が占有を離れた他人の物であることを認識しており、これを不法に領得する意思をもって自宅に蔵置している。この行為は、他人の占有を離れた物を自己の支配下に置く行為に他ならない。仮に被告人が当該米を盗品であると認識していたとしても、不法領得の意思をもって拾得した以上、その性質は占有離脱物横領罪の構成要件に該当する。また、贓物収受罪は占有離脱物横領罪よりも法定刑が重いため、罪の軽い占有離脱物横領罪の成立を否定して重い罪の成立を主張することは、被告人の不利益につながる点でも失当である。
結論
被告人の行為には占有離脱物横領罪が成立する。盗品であることの認識があっても、不法領得の意思に基づく拾得行為である以上、贓物収受罪は成立しない。
実務上の射程
本判決は、盗品拾得時における罪数・罪名の切り分けを示している。答案上では、客体が盗品であっても、それが「本犯等からの譲受け」か「占有離脱物の拾得」かという行為態様の差に着目し、後者であれば254条を適用すべきとする論拠として活用できる。
事件番号: 昭和34(あ)1701 / 裁判年月日: 昭和37年4月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】他人の占有を離れた物を領得した場合、当該物が遺失物等に該当するときは占有離脱物横領罪(刑法254条)が成立する。 第1 事案の概要:被告人が、本件タイヤを不法に領得した。原審はこのタイヤについて、元の持ち主の占有を離れた「占有離脱物」であると認定した。 第2 問題の所在(論点):他人の占有を離れた…