一 刑務所の看守は、公務員である。 二 刑法第一九七條の公務員の賄賂收受罪について刑事訴訟法第三六〇條第一項により「罪ト爲ルヘキ事實」を判示するには、公務員であることを判斷することのできる具體的事實を示してその者が職務に關し賄賂を收受した事實を説明すれば足りるのであつて、公務員たることの資格が認められる法令上の根據まで示す必要はない。原判決は被告人が京都拘置所の看守を拜命して津山刑務所に勤務中職務に關し金員の借與をうけて賄賂を收受した事實を説明しているのであつて、看守は監獄官制第三條第八條によつて公務員であることが判断され得るのであるから、原判決において右のごとく被告人が看守であることを判示している以上原判決には所論のような違法はない。
一 刑務所看守と公務員 二 賄賂收受罪につき公務員の資格に關する根據法令明示の要否
刑法7条1項,刑法197條,監獄官制8条,刑訴法360條1項
判旨
賄賂収受罪の判示において、被告人が公務員であることを判断できる具体的事実が示されていれば、その資格の法令上の根拠まで示す必要はない。
問題の所在(論点)
刑法197条の賄賂収受罪における「罪となるべき事実」(刑訴法360条1項)の判示として、被告人が公務員であることを基礎づける法令上の根拠まで示す必要があるか。
規範
刑事訴訟法360条1項に基づき賄賂収受罪の「罪となるべき事実」を判示するには、公務員であることを判断し得る具体的事実を示した上で、職務に関し賄賂を収受した事実を説明すれば足りる。公務員の資格が認められる法令上の根拠(根拠規定の条文等)を明示することまでは要しない。
重要事実
被告人は、京都拘置所の看守を拝命し、津山刑務支所に勤務していた者である。被告人は、当該勤務中にその職務に関して金員の供与を受け、賄賂を収受したとして起訴された。原判決は、被告人が「看守」である事実は判示したが、看守が公務員であることの法令上の根拠(監獄官制等)については明示していなかった。
あてはめ
本件において、原判決は被告人が京都拘置所の看守を拝命し勤務していた事実を説明している。監獄官制によれば看守が公務員であることは一義的に判断可能である。したがって、被告人が公務員であることを判断できる具体的事実である「看守」という職名が示されている以上、公務員性の判示として十分であり、法令の根拠を欠くという違法はない。また、刑の執行猶予の成否は事実審の自由裁量に属する事項である。
結論
被告人が公務員であることを判断し得る具体的事実が示されている以上、法令上の根拠の付記がなくても、賄賂収受罪の判示として法的に欠損はなく、原判決に違法はない。
実務上の射程
判決書における事実摘示の程度に関する判例であり、構成要件に該当する事実が具体的に特定されていれば足り、その法的性質を基礎づける法規の引用までは不要とする実務慣行を肯定する。司法試験においては、罪刑法定主義や適正手続の観点から判示の具体性が問われる際の限界事例として参照し得る。
事件番号: 昭和28(あ)4837 / 裁判年月日: 昭和30年12月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人が公務員であることの判示が原判決文から明らかであれば、公務員職権濫用罪等の公務員を主体とする犯罪において、その身分に関する判示を欠くという違法は存在しない。 第1 事案の概要:被告人Aが公務員職権濫用等の罪に問われた事案において、弁護人は原判決に被告人が公務員であることの判示が欠けており、法…