原審が被告人に對し刑の執行猶豫の恩典を與えないのは「すべて國民は法の下に平等である」との憲法第一四の趣旨に反するものであると主張するが、同條は人種、信條、性別、社曾的身分又は門地により政治的經濟的又は社曾的關係において、すべての國民を差別的に取扱わない旨を規定して居るのであつて、原審が被告人に對し刑の執行猶豫の言渡をしないのは同條所定の事由によりて被告人を差別待遇したのでわなく事實審として所論の辨償の事實をも參酌した上犯罪の情状からみて刑の執行猶豫の言渡をすることができないと判斷したのであるから、何等同條に反するものでない。
刑の執行を猶豫しない判決と憲法第一四條
刑法25條,憲法14條
判旨
憲法14条は人種、信条、性別、社会的身分又は門地による差別を禁止するものであり、事実審が犯罪の情状に基づいて刑の執行猶予を付さないと判断することは、同条に違反しない。
問題の所在(論点)
事実審が犯罪の情状を勘案して、刑の執行猶予を付さないとの裁量的判断を行うことが、憲法14条1項の「法の下の平等」に反するか。
規範
憲法14条1項は、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、すべての国民を差別的に取り扱わない旨を規定したものである。したがって、個別の刑事事件において、裁判所が被告人に対し刑の執行猶予の言渡しをしないと判断することは、それが上記所定の事由に基づく差別的取り扱いにあたらない限り、同条に違反するものではない。
重要事実
被告人は、農業会長Aが保管していた政府管理米29俵を窃取したとして、窃盗罪(刑法235条)で起訴された。原審は、被告人の自白や被害届等の証拠に基づき有罪と認定し、懲役刑を言い渡したが、刑の執行猶予を付さなかった。これに対し被告人側は、被害弁償等の事実があるにもかかわらず執行猶予が付されないのは、憲法14条の法の下の平等に反すると主張して上告した。
事件番号: 昭和25(あ)501 / 裁判年月日: 昭和25年12月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑の執行を猶予しないことが人種、信条、性別、社会的身分又は門地による差別に基づかない限り、憲法14条1項に違反しない。 第1 事案の概要:被告人が刑事事件において有罪判決を受けた際、裁判所が刑の執行を猶予しないとの判断を下した。これに対し弁護人は、執行を猶予しなかったことが不当な差別にあたり、憲法…
あてはめ
本件において原審が被告人に刑の執行猶予を付さなかったのは、憲法14条1項が掲げる人種、信条、性別等の特定の属性に基づく差別を行ったものではない。原審は、弁償の事実等の情状を参酌した上で、犯罪の性質や態様を含む諸般の情状に照らし、執行猶予を付することが相当でないと判断したにすぎない。これは事実審としての自由裁量の範囲に属する判断であり、特定の属性による不当な差別的取り扱いには該当しない。
結論
事実審が情状により執行猶予を付さないと判断することは憲法14条に反しない。本件上告は棄却される。
実務上の射程
量刑判断や執行猶予の成否について憲法14条違反を主張することの困難さを示す射程を持つ。単なる不当な量刑や事実誤認の主張を、属性に基づく差別等の特段の事情がない限り、憲法問題にすり替えることはできないという実務上の限界を画したものである。
事件番号: 昭和26(あ)4234 / 裁判年月日: 昭和28年3月3日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】個別の犯人に対する量刑の差異は、特別予防および一般予防の要請に基づく合理的な区別であり、憲法14条に反しない。執行猶予期間中の再犯という犯情を重視して量刑を判断した原判決に違憲の点はない。 第1 事案の概要:被告人は窃盗の罪を犯し、その刑の執行猶予期間中であったにもかかわらず、さらに本件犯行に及ん…