刑訴法第六三條によれば公判調書に署名捺印すべき裁判長は公判に列席したものでなければならないのであつて一人制の場合にはその事件の審理に關與した一人の裁判官でなければならないのに公判調書に列席した判事の氏名が記載してないから公判に列席した判事が公判調書に署名捺印したか否やも不明であるし又公判に列席した判事が果して判事たる資格のあつた者かどうかも不明である。列席判事の何人であるかということは公判において最も重要な事項であるからその氏名の記載を公判調書の記載要件としたものであつて從つてその氏名の記載を欠缺した公判調書は無効であると解すべきである。
列席判事の氏名の記載のない公判調書の効力
刑訴法63條,刑訴法60條2項2號
判旨
公判調書において、列席判事の氏名が記載されていないことは重大な欠缺であり、当該調書は証拠として無効である。
問題の所在(論点)
公判調書に列席判事の氏名の記載がない場合、その公判調書に証拠能力が認められるか(旧刑事訴訟法60条、64条の解釈)。
規範
公判調書に列席判事の氏名を記載することは、審理に関与した裁判官の特定および資格の有無を確認するために必要不可欠な法的要件である。したがって、この記載を欠く公判調書は法律上の効力を有さず、証拠能力を認められない。
重要事実
被告人が関与した刑事事件の第一審判決において、証拠とされた第一審第一回公判調書には、判事による署名捺印はあったものの、冒頭の列席判事の氏名欄が空欄であった。原審はこの調書に基づき有罪判決を下したため、弁護人が公判調書の有効性を争い上告した。
事件番号: 昭和23(れ)1577 / 裁判年月日: 昭和24年5月18日 / 結論: 棄却
一 しかしその判決をした當該裁判所の公判廷における被告人の自白は、憲法第三八條第三項並びに刑訴應急措置法第一〇條第三項にいわゆる「本人の自白」にあたらないことは當裁判所の判例とするところである。(昭和二三年(れ)第一六八號、同年七月二九日大法廷判決)從つて論旨は採用することができない。 二 しかし新刑訴法を如何なる事件…
あてはめ
本件公判調書には判事の署名捺印があるが、それは調書の作成手続を充たしたに過ぎない。列席判事の氏名が記載されていない以上、実際に審理に関与した判事が署名したのか、またその者に判事の資格があったのかを確認することができない。公判において列席判事が誰であるかは最も重要な事項の一つであり、その記載の欠缺は調書全体を無効とする重大な瑕疵にあたる。
結論
列席判事の氏名記載を欠く公判調書を証拠として採用した原判決には違法があるため、破棄を免れない。
実務上の射程
公判手続の厳格な書面主義に基づく判示であり、現行刑事訴訟法下においても公判調書の記載要件(刑訴規則44条1項2号等)の重要性を基礎づける際に参照し得る。
事件番号: 昭和25(れ)1387 / 裁判年月日: 昭和25年12月21日 / 結論: 破棄差戻
官報に掲載された第一回公判期日の召喚状の謄本に、被告人氏名「来海A」を、海Aと表示したのでは、公示送達の方式として召喚状の謄本を官報に掲載することを、適法に履踐したものということはできない。
事件番号: 昭和23(れ)251 / 裁判年月日: 昭和23年6月3日 / 結論: 棄却
一 福岡地方檢察廳柳川支部檢事が福岡地方裁判所柳川支部に對し公訴を提起すに當り之の公判請求書に誤つて所屬廳を柳川區裁判所檢事局管轄裁判所を柳川區裁判所と表示したからといつてその公訴提起を不適法ということはできない。 二 檢事松本一成の本件控訴申立書は昭和二二年六月二六日(控訴期間最終日)附で福岡高等裁判所宛になされてい…
事件番号: 昭和26(あ)2378 / 裁判年月日: 昭和27年10月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】逮捕状を発付した裁判官が、被疑者の前科や犯罪事実をあらかじめ認識していたとしても、それだけで「被告人が事件の基礎となった取調べに関与した」ことにはならず、裁判官の除斥事由(刑訴法20条7号)には該当しない。 第1 事案の概要:被告人が刑事裁判に付された際、第一審で逮捕状を発付したA裁判官が審判に関…
事件番号: 昭和23(れ)882 / 裁判年月日: 昭和23年12月24日 / 結論: 棄却
前記五月四日の公判廷に第一回の公判廷に出席した判事Aが列席していなかつたことから、直ちに同判事が同日出勤せず從つて同日合議が成立せず判決書の作成もなされなかつたものと認めなければならないものではない。然らば原判決書の日附が虚僞であつて眞實の作成年月日を記載していないと云う所論は到底採用することはできない。